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上手に活用して競争優位を確立する。産業用ロボットの最新技術

上手に活用して競争優位を確立する。産業用ロボットの最新技術

産業用ロボットロボットメーカーの開発競争が激化し、最新ロボットの性能が飛躍的に向上しているなか、現在はどのような最新技術が搭載されるようになったのでしょうか。今回は、産業用ロボットの最新技術と、その技術がもたらすメリットについてご紹介します。

産業用ロボットは工場の生産性アップだけでなく、作業員の労働環境改善など、多くのメリットをもたらします。産業用ロボットの有用性は日本だけでなく海外でも認められており、特に中国やドイツといった製造業を重視している国々も、新しいロボットの開発に力を注いでいます。

各メーカーの開発競争が激化し、最新ロボットの性能が飛躍的に向上しているなか、現在はどのような最新技術が搭載されるようになったのでしょうか。今回は、産業用ロボットの最新技術と、その技術がもたらすメリットについてご紹介します。

産業用ロボットは人の代わり。技術の融合で作業域が拡大

最初に、ロボット性能の向上について解説します。そもそも産業用ロボットは、「人の作業を代替する」ために生み出されました。人が行っていた作業をロボットが代わりに行うことで作業を効率化し、生産性を向上することが大きな目的です。ロボットが人の作業を代替するためには、人の手や腕、足といった機能を備える必要があります。

世界で一番最初の産業用ロボットは1950年台にアメリカで生まれ、モノを掴んで回転し、ほかのラインに移す作業を担いました。この作業は、人の『腕と手』の機能を持っていたのです。

しかし人の腕や手の機能だけでは、掴んで移動させるといった作業しかできません。そのため、産業用ロボットは腕や手などの基本機能にほかの技術を融合させ、溶接や塗装といった多くの作業を可能にしてきたのです。

いくつか例を挙げると、人の『足』にあたる機能を持つ移動型ロボットにGPS機能を搭載し、自分の位置を把握しながらイベント会場を自動で巡回できるようになりました。ほかには、『目』と『脳』にあたるセンサーとAIを備えることで、対象物を認識しながら最適な動作を自分で考えてピックアップできるロボットなども開発が進んでいます。

次からは、ロボットに搭載されている最新技術と、その技術がもたらすメリットをご紹介します。

最新技術1.AIを活用してティーチングが不要に

産業用ロボットの認知度は年々高まっていますが、同時に普及をより進めるための課題も顕在化しはじめています。その課題は、システムインテグレータ(SIer)の不足です。

産業用ロボットを実際に運用するまでには、まず現場の課題を見出し、課題解消のためのシステム構築、最終点検などを経る必要があります。また、自動化する作業工程にあわせた動作をロボットに設定(ティーチング)しなければなりません。

システムインテグレータは、こうした導入準備や保守運用の役割を担っています。行政からの補助金やメーカーの講習などによって、システムインテグレータの育成に力が注がれているものの、現場の人材が足りていないのが現状です。

こうしたなか、ロボットにAIを搭載することで、ロボット自身が最適な動作を都度考えて実行できるようになりはじめています。AIによってシステムインテグレータによる動作設定(ティーチング)が不要となり、運用コストの低下や人材の有無に左右されない安定した生産活動が見込まれます。

関連記事:ティーチングレスを実現。産業用ロボットにAIを搭載するメリット

最新技術2.IoTで生産性を数値化して改善に活かす

IoTとは、「Internet of Things」の略で、モノがインターネットでつながることを指します。工場のロボットや機械の稼働状況をすべてコンピュータで管理できるようにすることで、ロボットの稼働率を把握したり、故障の前兆をいち早く見つけたりできるようになりました。また、稼働状況の収集と分析が可能になったことで数値に基づいたオペレーションが可能になり、責任者や経営者の経験などに頼る必要がなくなるため、属人性の排除にもつながります。

IoTなどの技術を利用し、工場全体をインターネット化することを「スマートファクトリー化」と呼びます。スマートファクトリーは、ドイツ政府が提唱した製造業界の刷新を目指して提唱した「インダストリー4.0」という構想をもとに生まれました。日本政府もこれを受けて「コネクテッド/インダストリー」を提唱し、製造業界の効率化に向けた取り組みが行われています。

関連記事:スマートファクトリーとは?メリット・デメリットを事例と一緒に解説

最新技術3.協働ロボットは「導入しやすい」から「高性能」へ

数年前まで産業用ロボットを導入するためには、安全柵などでロボットの周りを囲うなど、人が接触して事故が発生しないようなシステムを構築しなければなりませんでした。しかし、平成25年に産業用ロボットにかかわる法律が一部改定され、出力が80W未満のロボットであれば、人と同じエリアでの作業が可能になりました。

こうした背景から生まれたのが、協働ロボット(COBOT)です。人と同じエリアで作業することを前提としているため、比較的小型で出力が抑えられており、安全性が高い一方、まだまだ開発が発展途上のため、高速な動作や重いモノは持てないといった課題も抱えていました。

しかし近年、協働ロボットのメリットである「スポット導入が可能」という点から、需要が高騰。各メーカーが開発への注力をはじめました。2018年4月にドイツで開催された、世界最大級の国際産業見本市のハノーバーメッセ2018では、協働ロボットの展示でにぎわいを見せ、高性能化や小型化された協働ロボットに注目が集まりました。

たとえば、協働ロボット2台を用いて協調制御したり、センサーを搭載したアームがモノの位置や状態を認識して適切な処理を行ったりできるロボットが現れています。協働ロボットは、これまでのように「導入のしやすさ」だけでなく、「安全性」と「生産性」を兼ね備えたロボットに進化しつつあるのです。

参考:オートメーション新聞別冊『産業用ロボットナビ Vol.4』
関連記事:協働ロボットのメリットとは?流行の背景や定義などの全知識

最新技術を活用して課題を解消していくことが成長につながる

これまでに紹介してきた技術だけでなく、アームの力加減を自動で制御する力覚センサーなどの技術も、産業用ロボットへの活用が進められています。これからも産業用ロボットは開発が進み、新しい技術が搭載されていくでしょう。開発が進むにともなって、ロボットが活躍する領域も広がっていくと考えられます。

新しい技術は産業用ロボットの運用を難しくするのではありません。作業者や課題にかかわらず高い効果を出せるようになるための技術です。近年の技術進化は急速なため、一般化するまでの期間も短くなります。こうした新しい技術をいかに上手く活用していくかが、今後の製造業界で戦っていく鍵になるでしょう。

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