産業用ロボットを導入する時に知っておくべき法律や規則の全知識

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2017年、産業用ロボットの総受注価額は過去最高額を記録し、今後も普及が進んでいくと考えられます。しかし、ロボットにかかわる事故件数も年々増加しているのが現状です。作業員の産業用ロボットに対する知識不足をはじめとした、現場責任者のリスクアセスメントが課題となっています。

現場で働く労働者の健康を守りつつ高い生産性を発揮するために、産業用ロボットの導入や使用には、さまざまな法律や規則が定められています。今回は、産業用ロボットの導入を検討している人が知っておくべき法律や規則などのルールをご紹介します。

すべての前提となる法律「労働安全衛生法」

まず、働くすべての人が必ず遵守しなければならないのが、「労働安全衛生法」です。労働安全衛生法は国会で制定されたルールであり、記載事項を守らない場合、法的罰則を受けます。

労働安全衛生法では、大きく以下の3つについて定めています。

  • 危険防止のために必要な措置
  • 安全衛生教育や就業にあたって必要な措置
  • 労働者の健康保持や増進の措置

たとえば、法人や個人事業主が労働環境の改善や必要に応じて労働者への教育を行うことや、労働者が安全を担保するために事業主の定めたルールを守らなければいけないことなどを定めています。

労働安全衛生法には、産業用ロボットの使用方法について定めた条文はありません。しかし、労働者の安全を守るための最も基本となる法律のため、事業者だけでなく、労働者も理解しておくとよいでしょう。

労働安全衛生法については以下の記事で詳しく解説しています。
会社が遵守すべき「労働安全衛生法」とは?わかりやすく説明

安全対策の基準となる「労働安全規則」

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労働安全衛生法で定められた措置を、より詳細な事項に落とし込んだのが「労働安全規則」です。産業用ロボットについての措置は、「労働安全規則 第2編 9節」に以下の4つの作業にわけて記載されています。

条文 措置を講ずる作業
第150条の3 教示等
第150条の4 運転中の危険の防止
第150条の5 検査等
第151条 点検

産業用ロボットには大きな出力を有するモデルもあり、万が一ロボットと人が接触してしまった場合、作業員が死に至る大きな事故につながる可能性があります。こうした事故リスクを減らすために、第150条の4では、以下のように定められています。

第150条の4
事業者は、産業用ロボットを運転する場合(教示等のために産業用ロボットを運転する場合及び産業用ロボットの運転中に次条に規定する作業を行わなければならない場合において産業用ロボットを運転するときを除く。)において、当該産業用ロボットに接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、さく又は囲いを設ける等当該危険を防止するために必要な措置を講じなければならない。

労働者とロボットが接触する危険があるときは、柵や囲い、センサーを設ける必要があると定められています。また、物理的な安全対策以外にも、ロボットを安全に運転させるためのルールを策定しなければなりません。

通達による「80W規定」の改正

産業用ロボットの技術進化や製造業へのロボット導入促進を背景に、平成25年12月25日に、上記の規則が一部改正されました。

出力が80W未満の産業用ロボットを導入する際は、ロボットの周囲に安全柵を設置する必要がなくなり、人とロボットが同じ作業エリアで協働できるようになりました。これにより中小企業でも導入しやすい協働ロボットが開発され、産業用ロボットの普及が加速することになったのです。

協働ロボットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
協働ロボットのメリットとは?流行の背景や定義などの全知識

国際的な品質や製造環境の水準を示す「ISO」と「JIS」

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ISO(International Organization for Standardization)とは、国際的に通用する「ISO規格」を制定する非政府機関「国際標準化機構」を指します。ISO規格は、世界で同水準の品質や製造環境を管理する仕組みです。たとえば産業用ロボットには、以下の規定があります。

ISO10218-1(JIS B 8433)
ロボットの設計や製造において、安全性をどのように保証するか検討するための手引きとされ、リスク除去の要求事項について記載
参考:JIS B 8433(ISO10218-1)


ISO10218-2(JIS B 8433-2)
ロボットインテグレーション、設置、機能試験、その他各安全防護の指針について記載
参考:JIS B 8433(ISO10218-2)

JIS(Japan Industrial Standard)は、「日本工業規格」を指します。国際規格であるISO規格の原文は英語やフランス語で作成されているため、日本国内で適用する際に不具合が生じます。そのため、日本工業標準調査会(JISC)が原文との整合性を保ちながら日本語への翻訳を行ったものが「JIS規格」です。

JIS規格に適合していれば、品質を証明する国際規格を満たしていることになります。

ロボット事故が発生したときの責任は誰が取る?

労働安全衛生法や労働安全規則、ISOなどを遵守していても、事故の完全防止は難しいでしょう。ふとした瞬間のミスや、不備がなくても偶然発生してしまう可能性もあります。

こうした事故が発生したとき、責任を負うのは「各法律や規定を遵守していない」個人や法人です。

工場で産業用ロボットを活用する場合、事業者はロボット作業に携わる作業員全員に特別教育を施す必要があります。しかし、もし教育を施していない作業員が事故にあった場合、事業者や法人が責任を取らなければいけません。一方、事業者が作業員に教育を行い、作業ルールを適切に定めているにもかかわらず、作業員がルールを守らずに事故を起こした場合、作業員自身が責任を問われることもあります。

現場での事故は複数の要因がかかわって発生することがほとんどです。そのため、原因の見極めは公的機関の調査のもと正確に行われます。「責任を負わないために」ではなく、「事故を発生させないために」、作業リスクの改善を常に行いましょう。

参考記事:産業用ロボットの作業には資格が必須。特別教育の講座内容も解説
参考記事:産業用ロボットの事故件数が増加中。事例と責任の所在を解説

企業トップ層が自らルールを遵守し現場に周知するのが重要

産業用ロボットを上手に活用できれば、生産性向上や労働環境の改善が見込めます。しかし、産業用ロボットにまつわる法律や規則について理解不足のまま導入すると、思わぬ事故や被害の影響で望んだ効果を得られないかもしれません。

事業主が事故リスクを最小化できれば、作業員の働きやすさや生産性が向上し、産業用ロボットによるメリットを得られるでしょう。すべての人が安全かつ高い生産性で働ける環境を作るために、企業のトップ層が法律や規則の遵守を徹底し、現場の作業員に周知していくことが何より大切です。

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