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常に安全への配慮を。産業用ロボットの業務に特別教育が必要な理由

常に安全への配慮を。産業用ロボットの業務に特別教育が必要な理由

ロボットによる事故被害を防ぐため、工場は一定の安全基準を満たさなければ産業用ロボットを導入できません。工場がロボットを導入するためには、定められた安全対策を施したり、ロボットを扱うための特別教育を受けたりする必要があります。今回は、産業用ロボットの危険性と、その危険を回避するために知っておくべきことをご紹介します。

少子高齢化が進む中、人手不足などの問題を解消し生産性の向上が期待できるとして、需要が高まっている産業用ロボット。実際に、製造現場へ導入する企業も増えています。

しかし、産業用ロボットの導入はメリットばかりではなく、リスクも伴います。産業用ロボットによる事故被害は、人が原因の事故よりも被害が大きくなる可能性があります。

ロボットによる事故被害を防ぐため、工場は一定の安全基準を満たさなければ産業用ロボットを導入できません。工場がロボットを導入するためには、定められた安全対策を施したり、ロボットを扱うための特別教育を受けたりする必要があります。

今回は、産業用ロボットの危険性と、その危険を回避するために知っておくべきことをご紹介します。

過去には死亡事故も。常に危険が伴うことを意識する

高性能な産業用ロボットでも、予期せぬトラブルが原因で予測不能な動作をすることも。もし、人とロボットの距離が近いときにがトラブル発生すると、死亡事故といった大惨事を引き起こす可能性もあります。ロボットを扱う際には、危険が伴うことを常に念頭に置いておかなければいけません。

例えば、産業用ロボットを正しく動かすためには、ロボットにプログラムを記憶させるティーチング(教示作業)が必要です。ティーチングはロボットに電源が入った状態で行うため、必然的に事故リスクが高くなります。通常運転時は、ロボットが安全柵で隔離されています。しかし、ティーチングなどのために人が柵内で作業する場合、逃げ場がなくなってしまうため、事故につながるリスクが高まります。

産業用ロボットによる過去の死亡事故は、いずれもロボット稼働中に柵や囲いの中で発生しています。(※)

2012年に起こった事故では、被害者が加工済み製品の計測作業を行っていた際に、ロボットが動き出して背後から押しつけられました。また2010年には、ロボットに異常が発生して停止したため点検を行っていたところ、ロボットが動き出して胸部を挟まれる事故が発生しています。

産業用ロボットの動作を完全に制御することは難しく、万が一のために安全対策が欠かせません。ティーチングの担当者と現場での作業者が異なる場合は、特に注意が必要です。

(※) リンク:労働安全衛生法における産業用ロボット規制の概要

産業用ロボットを安全に扱うための法律をチェック

産業用ロボットは、一歩間違えば大事故につながる危険性をはらんでいます。産業用ロボットを扱う人の安全を確保し、労働災害を防止するため、以下のような法律が制定されているほどです。

労働安全衛生規則第150の4(操作中の危険の防止)
事業者は、産業用ロボットを運転する場合(教示等のために産業用ロボットを操作する場合及び産業用ロボットの運転中に次条に規定する作業を行わなければならない場合において産業用ロボットを運転するときを除く。)において、当該産業用ロボットに接触することで使用者および労働者に危害が加わるおそれのあるときは、さく又は囲いを設ける等当該危険を防止するために必要な措置を講じなければならない。

産業用ロボットが人に危険を及ぼすおそれのある場合は、安全柵や囲いの設置を義務付ける内容です。ただし、ここでの産業用ロボットとは、定格出力が80Wを超えるものを指します。

厚生労働省は、この規定を「一定の条件を満たす場合には『危険が生ずるおそれのあるとき』に当たらない」として2013年に規制緩和しました。しかし、この趣旨は安全対策を不要とするものではなく、産業用ロボットと人の協働作業を可能にするために定められたものです。

労働安全衛生法第59条第3項
事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

従業員を危険な業務につかせる場合、従業員に特別教育を受けさせることを義務付ける内容です。特別教育が必要な業務には、小型車両系建設機械の運転やアーク溶接などがあり、産業用ロボットの操作にかかわる業務も含まれています。

産業用ロボットの業務にかかわるなら、安全特別教育の受講が必須

業務で産業用ロボットに携わる従業員は、安全のための特別教育を受けなければいけません。具体的な対象業務は、労働安全衛生規則第36条第31号及び第32号で定められています。

産業用ロボットの可動範囲内でティーチングや検査を行う業務、またはロボットの可動範囲外でこれらの作業に関係のある機器を操作する業務が該当します。ロボットに近い場所で作業する人はもちろん、離れた場所で作業する人も、機器の誤操作による事故を防ぐため、正確な知識と運転技能を身につける必要があるためです。

従業員への特別教育の実施は事業者に義務づけられているため、事業者の責任で必ず受けさせなければいけません。科目や時間についても厚生労働大臣によって定められているので、よく確認しておきましょう。なお、受講時間も労働時間となるため、所定労働時間内に行われる必要があります。

特別教育は、中央労働災害防止協会や民間のロボットメーカー、各都道府県の労働基準協会連合会などで実施しています。産業用ロボットへの理解を深めるためにも、必ず受講させるようにしましょう。

出力80W未満の協働ロボットは特別教育が不要

産業用ロボットの特別教育についてご紹介してきましたが、特別教育が必要ない産業用ロボットもあります。それが、人と共同で作業する協働ロボットです。ただし、特別教育が不要な協働ロボットは、定格出力80W未満のものに限ります。

協働ロボットは、技術革新による小型化、軽量化などによって生まれたロボット。ティーチングの容易さや高性能な安全機能により、これまでロボット化が難しかった工程にも活用できると期待されています。

先ほどご紹介した「労働安全衛生規則第150の4」では、80W未満の産業用ロボットはこの規定の対象になっていないため、特別教育が不要です。ティーチングや検査の担当者であっても、受講は義務付けられていません。

また協働ロボットは、一定の条件を満たせば80W以上でも人と同じスペースで作業することが認められています。安全柵設置などの金銭的コストや必要スペースを減らし、工場に産業用ロボットの導入を促すことで、業界全体の生産性向上が目的です。

しかし、法律で義務付けられていないとはいえ、安全対策を怠ることは禁物です。ロボットについて正しく理解するとともに、事故防止策もしっかり検討しておきましょう。

安全対策は常に万全に、が鉄則

産業用ロボットは、今後ますます製造現場への導入が進み、担当できる工程や分野も幅広くなっていきます。また、人と一緒に作業する協働ロボットの普及も進むでしょう。

技術の進歩とともにロボットの性能も上がっていますが、システムが複雑になり、制御が難しくなる側面もあります。事故を未然に防ぐためにも、現場で産業用ロボットにかかわる作業員はもちろん、ロボットメーカーやSIer(システムインテグレータ)との情報共有も欠かせません。

産業用ロボットは多くのメリットを提供してくれますが、危険性についても常に意識する必要があります。産業用ロボットを導入する際は、安全に配慮しながら上手に使いこなしましょう。

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