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品質機能展開(QFD)は顧客ニーズをとらえた製品開発に必要な手法

品質機能展開(QFD)は顧客ニーズをとらえた製品開発に必要な手法

品質機能展開とは、顧客のニーズをものづくりに正しく反映させるための設計アプローチです。顧客が欲しいと思う製品を企画するために重要な手法のため、ぜひとも知っておきましょう。今回は、品質機能展開の基礎知識やメリット、おおまかな進め方の流れを解説します。

QFD

ものづくりでは、企画と製造はそれぞれ重要な工程であり、同時にまったく性質の異なるものです。製品は最終的に商品として市場へ売り出さなければなりません。たとえ最新の技術によってつくられ、優れたスペックをもつ製品であっても、顧客が欲しいと思うものでなければ売れ筋商品とはならないでしょう。

そこで、製品を企画する段階で売れる要素を盛り込むために必要な「品質機能展開」という設計アプローチに注目します。今回は、品質機能展開の基礎知識やメリット、おおまかな進め方の流れを解説します。

品質機能展開(QFD)とは?

QFDとは

品質機能展開(QFD:quality function deployment)とは、顧客のニーズをものづくりに正しく反映させるための設計アプローチです。主に新製品や新サービスの開発などの場面で、顧客のニーズを満たす品質をどうやって確保すべきかを明確にするために使われます。

このアプローチは1960年代の日本で生まれ、当時ブリジストンでタイヤの品質保証体制に使われたのがはじまりです。それ以降はトヨタや三菱造船などの工場でも使われるようになり、時間をかけて洗練・確立されていきました。1980年代にはアメリカの自動車業界でも活発に導入され、現在にいたるまで世界中に広がっています。

品質機能展開のメリットは3つ

QFDのメリット

製品開発の初期段階で行う品質機能展開には多くのメリットがあり、とても大事な役割を担っていると覚えておきましょう。それでは、代表的なメリットを3つご紹介します

確実な品質保証体制が構築できる

品質機能展開では、開発がスタートする以前から、製品の仕様とそれを実現する具体的な要素(品質特性)を入念に突き合わせます。

たとえば「燃費の良い自動車」を製造するとき、一般的にエンジンの排気量や車両重量などに制約がなければなりません。ここでの排気量や重量が品質特性です。製品を成り立たせる前提条件を精査することで、品質課題や技術課題などの検討すべき項目に抜け漏れを見つけやすくなります。

結果として、後工程での手戻りを軽減し、確実な品質保証体制が構築できるのです。

顧客の声を重視するためヒット商品の開発に役立つ

マーケティングの分野には、「マーケティングコンセプト」という概念があります。この概念は「生産したものを販売する」のではなく、「購入されるものを生産する」という考え方です。

近年は「つくれば売れる」という生産者中心の志向(プロダクトイン)から、顧客が求めるものに重点を置く志向(マーケットイン)へ変遷しています。これを踏まえると、品質機能展開は顧客の声を製品に落とし込む手法のため、ヒットする商品を開発するうえで役立ちます。

開発プロセスを見える化できる

品質機能展開は、単なる思考法にとどまらず、数量的にデータを分析した結果から品質を決める作業です。こうした作業の過程では、データや分析結果が開発プロセスにおける資料として残ります。つまり、開発プロセスを見える化できるのです。

これによって、次のようなメリットが派生して生まれます。

  • 記録によって品質保証を証明できる
  • デザインレビュー(DR)用の資料として活用できる
  • 経験や勘といった暗黙知を見える化して技術ノウハウを伝承できる

品質機能展開を構成する4つのステップ

QFDのステップ

では、実際に品質機能展開を進める際のおおまかな流れを解説します。ステップは4つに分けることができるため、詳細を順にみていきましょう。

ステップ1.顧客が求める品質を整理

まず、顧客が求める品質(要求品質)はどのようなものかを、アンケートなどの手段で収集しましょう。製品・サービスの関する顧客の声は多種多様であり、潜在化していたり、クレームの形をとる場合もあります。顧客から集めたデータだけでなく、新QC7つ道具の「親和図法」や「系統図法」のような、あるデータから派生して新たなデータを模索できる管理手法を使うとよいでしょう。

洗い出した要求品質は言語データとしていくつかの項目に分類・集約し、一次から二次、三次ほどの階層構造にまとめます。この作業を「要求品質展開」といいます。自動車製品の場合でたとえると、「使いやすい」という一次的な要求品質に対し、二次的な要求品質は「室内が広い」「室内が静か」などが考えられます。まとめた結果は「要求品質展開表」として図表に記録しましょう。

【図表例】

一次品質二次品質
使いやすい室内が広い
駐車がしやすい
快適である室内が静か

関連記事:【新QC7つ道具】親和図法とは?うまく活用して現場の課題を整理

ステップ2.要求品質を実現する要素を整理

顧客の声である要求品質に対し、それを実現する技術的・工学的な要件(品質特性)を具体的に洗い出します。たとえば「室内が広い」や「駐車がしやすい」といった顧客要求は、自動車のボディサイズ(外形寸法)が関係しそうだとわかります。

このように、要求品質のいずれかと関連のある品質特性を挙げることを「品質特性展開」と呼びます。今回の自動車製品の事例に沿うと、次のような品質特性が考えられます。

  • 車幅
  • 車高
  • 空気抵抗
  • エンジン音

ステップ3.品質表の作成

要求品質展開と品質特性展開が終わったら、このふたつをかけ合わせて新たに「品質表」と呼ばれるマトリックス図を作成します。

品質表では行を要求品質に設定し、列を品質特性に設定することで、ふたつの情報を整理・評価できるようにします。ある顧客要求と品質特性が相関するときは、その関係度合いに応じて「〇」や「△」など表記を分けたり、点数づけをすると効果的です。

たとえば、品質特性に挙げた「車幅」や「車高」は、要求品質で挙げた「室内が広い」または「駐車がしやすい」と関係度合いが高いといえるでしょう。

また、室内の静かさは走行中の「空気抵抗」を減らしたり、「エンジン音」を抑えることで実現が可能だといえます。図表にすると、次のようになります。

【図表例】

要求品質品質特性
一次二次車幅車高空気抵抗エンジン音
使いやすい室内が広い  
駐車がしやすい  
快適である室内が静か  

ステップ4.重点を置く品質を絞り込む

今回の事例では簡易的な品質表が作成されましたが、実際は多数の要求品質と品質特性が入り混じって複雑な形となる場合が多くなります。

そこで、最後に製品に反映させる品質を、必要十分になるまで絞り込む作業が必要です。この作業で使う手法は多種多様で、代表的な例は次のようなものがあります。

手法目的
コンジョイント分析顧客が重視する機能を絞り込む
技術展開自社がもつ技術の強みや弱みを分析する
コスト展開品質を実現するためのコストバランスを検討する
TRIZ(トリーズ)品質を合理的かつ創造的に実現する方法を検討する
タグチメソッド消費者や生活者の目線から技術の品質を追求する

このように、ほかの品質管理手法や問題解決手法を駆使して、次の工程となる具体的な製品設計へ活かすのです。

関連記事:コンジョイント分析とは?活用方法ややり方について解説

顧客の声を正確に自社の品質へ変換しよう

品質機能展開の本質は、さまざまな分析手法を活用して精密な品質表を作成することで、売れる製品設計の輪郭をつくることです。

近年は顧客ニーズが多様化する傾向にあり、顧客が欲しいと思う製品が売れる時代といわれます。これにともなって、ものづくりにおける品質設計には、顧客の声を正確に反映させる必要性が高まっているのです。品質機能展開はこうした時代の変化に対応できる手法であり、今後も重要となっていくでしょう。

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