医療にも進出。産業用ロボットを用いた業界の活路とは

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高齢化という深刻な社会情勢の中で、製造の世界で活躍する産業用ロボットが、近年になって医療の分野に進出しています。

医療業界において産業用ロボットはどのように活用されているのでしょうか。今回は、医療業界の全体図や市場・情勢の動向から、医療へのロボット導入事例、ロボットを用いた業界の活路について解説していきます。

医療業界のロボット市場動向

「医療業界」と一口に言っても、業種は多種多様です。まずは業界の全体像について整理した上で、市場動向について解説していきます。

医療業界の全体図

医療業界の中心部に位置するのは、最も身近な存在である病院や診療所などの「医療機関」です。続いて、医薬品の創薬・生産を担う「製薬会社」と、治療・診断に使用する機器製造を担う「医療機器メーカー」も医療の世界には欠かせません。さらに、医薬品開発や治験業務を代行する「CRO(医薬品開発業務受託機関)」や「SMO(治験施設支援機関)」、医薬品を代理販売する「CSO(医薬品営業マーケティング受託機関)」も関連業界として挙げられます。

医療と密接な関係にある「介護施設」や「福祉施設」なども含めれば、医療業界は数多くの業界を内包しています。

医療関連市場は安定して拡大中

日本の医療業界における市場は、全体を通して堅調に増加する傾向にあります。この傾向は、先進国特有の「高齢化の進展」「医療技術の進歩」「健康志向の上昇」といった要素による、医療関連分野の商品・サービス利用者の増加が主な要因です。他の大規模産業である「卸売・小売業」「製造業」「鉱業・建設業」と比較しても、医療は景気の影響を受けづらく、就業者数は2030年推定で製造業や卸売・小売業に並ぶ962万人まで増加する推定も出ています。

参考: 「平成27年 労働力需給の推計」独立行政法人労働政策研究・研修機構

医療業界成長を急かす「2025年問題」

医療業界は安定成長の一途ですが、長年日本で問題となっている「少子高齢化」の影響を受けて、「成長を余儀なくされている状態」と言っても過言ではありません。日本の人口推移からして、2025年には団塊世代(1947~1949年生まれ)が後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という過去に例を見ない高齢化の時代が訪れます。この超高齢社会を超える高齢化問題は、「2025年問題」と呼ばれています。

参考: 「今後の高齢化の進展~2025年の超高齢社会像~」厚生労働省

さらに時代が進んで2040年になると、高齢化はさらに進展します。国立社会保障・人口問題研究所の推定(2017年時点)では、2040年には日本の人口が1億1000万人まで低下し、1.5人の現役世代が1人の高齢世代を支えるようになるとされています。労働人口の減少だけでなく、医療業界への負担が増加する未来は容易に想像が可能です。

参考: 「日本の将来推計人口」国立社会保障・人口問題研究所

上記の国家的危機とも言える未来に対し、医療業界ではさまざまな施策が講じられています。予防医療・再生医療・遺伝子治療へのシフト、地域包括ケアシステムの構築、ロボット・ICTの活用などアプローチはさまざまですが、ようやくここで本題の「ロボット」が登場します。以降では、医療へのロボット活用可能性について言及していきます。

産業用ロボットは医療に活用できるのか

本来「産業用ロボット」は、主に製造業における工場での組立・加工・梱包作業などを自動化する目的で利用されるロボットです。しかし、医療業界においても産業用ロボットは活用されています。ここでの「活用」は、以下の2通りに考え方が分かれます。

  • 医薬品や医療機器の製造に産業用ロボットを活用する
    産業用ロボットが主に製造に用いられるように、医薬品や医療機器の製造プロセスでロボットを使用することで、製造業と同じように生産効率を上げる目的で活用する、という考え方です。
  • 産業用ロボットの技術を応用した医療ロボットを活用する
    産業用ロボットをその定義のまま活用するのではなく、技術を応用する形で手術支援やリハビリ支援などの医療関連ロボットを活用する、という考え方です。この場合は「産業用ロボット」というよりも、狭義では「サービスロボット」の分野として扱われます。

上記の違いを踏まえて、医療における産業用ロボットの活用事例についてご紹介していきます。

医薬品創薬・生産&薬剤調整ロボット

著名なロボットメーカーの「川崎重工」や「デンソーウェーブ」を筆頭に、医薬品創薬・生産&薬剤調整を担う産業用ロボットを製品化して活用する事例はすでに多く存在します。導入されたロボットは、バイアル(注射剤を入れる容器)充填からラベル貼りまでの一部作業を高速自動化しており、労働環境改善やヒューマンエラー・雑菌混入のリスク低減などの恩恵を与えています。

製薬分野で活用される産業用ロボットは、滅菌や洗浄のための過酸化水素ガス(VHP)に対する耐腐食性やサニタリー(衛生)性を備えており、一般的な産業用ロボットよりも業務性質に合わせた特化型と言えます。ほかにも、ロボット自身を含めてクリーンルーム内を洗浄するための可動軸を増やす工夫(川崎重工)や、バクテリアの発生を防ぐためにアルミ表面を滑らかに磨き上げる特殊な加工(デンソー)なども特徴として見られます。

参考: 「医療・医薬業界向けロボット 」川崎重工の産業用ロボット

ロボット細胞培養システム

iPS細胞や再生医療用の幹細胞の培養をはじめとした再生医療を実用化するためには、移植に必要な細胞を高品質・安全・安価に提供する必要があり、細胞培養の自動化は非常に重要技術とされています。そこで産業用ロボットを再生医療の分野にも活用する動きもあり、代表的な例が澁谷工業株式会社のロボット細胞培養システム「CellPROi」です。施設の無菌操作環境と細胞培養を自動化するロボットをアイソレータ(細胞培養装置)に内蔵した画期的なシステムで、高品質な培養を継続して実施でき、かつ繊細な細胞操作を実現しています。

参考: 「ロボット細胞培養システム」澁谷工業株式会社
参考:幹細胞の自動培養システム

医療現場の最前線で活躍する手術支援ロボット

介護用ロボットやリハビリ用歩行支援ロボットなど医療の現場でロボットを活用するという発想はすでに世界に浸透しています。この発想は医療現場の最前線とされる手術においても例外ではありません。

現在手術用ロボットとして世界的に実用化されているのは、米インテュイティヴ・サージカル社が開発した腹腔鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」です。ダヴィンチは、高画質で立体的な3Dハイビジョンシステムの手術画像のもと、回転可動域が大きく精密な動作をするアームを駆使して人の手の動きを再現します。術者は遠隔からモニターを通してアームを操作することで、自分の手で行うように手術が可能です。手術中の安全・衛生面が確保されるだけでなく、傷を小さくすることで術後の回復が早くなるといった効果が期待できることから、日本国内でもダヴィンチを使用した手術実績は年々増加しています。

参考:「ダヴィンチ手術」 静岡がんセンター

日本国内でも手術支援ロボット開発が進行中

現在の手術支援ロボット市場はダヴィンチの一強ですが、日本国内においても開発・投入は今後発展していくことが予想されています。

すでにデンソーは手術中の医師の腕を支えるタイプの支援ロボット「iArmS」の投入実績があり、ダウィンチのようなロボットが患者に直接触れるタイプのロボットは、メディカロイド(川崎重工とシスメティクスの共同出資社)が国産第1号を開発しています。この他、オリンパスが内視鏡を使った手術にAIとロボットを活用するシステムを2024年までに実用化すると発表するなど、医療現場でロボットが当たり前のように活躍する時代は少しずつ近づいていると言えるでしょう。

参考: 「医師を支えることは、 命を救うこと。 | イノベーション 」DENSO – 株式会社デンソー
参考:「オリンパス、AIとロボットで手術支援へ」日本経済新聞

日本の医療の未来はロボットと共に切り開く

世界有数の高齢者大国である日本は、医療のあり方自体の転換や医療技術の発展などのアプローチで国の未来を支える努力を続けています。

今後医療分野におけるロボット開発・投入はさらに増える見込みなので、医療機関 や医療関連企業にもロボットによる変革の契機が十分にあると認識しておきましょう。

もしロボット活用や現場の課題についてお悩みの場合は、ぜひロボットSIerにご相談ください。問題点の抽出や改善施策のご提案、補助金申請のサポートまで、経験豊富なエンジニアが御社のお悩みを解消いたします。

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