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労働力人口減少やスキル不足。製造業が直面する人手不足。その根本的な原因と対策

労働力人口減少やスキル不足。製造業が直面する人手不足。その根本的な原因と対策

製造業では、人手不足が長らく課題とされてきましたが、近年はその傾向がさらに加速しています。今回は、社会全体と製造業界の両視点から、人手不足の原因と対策について解説します。

先日、株式会社帝国データバンクから発表された調査によると、2018年は人手不足による倒産件数が過去最高件数を記録したことが発表されました。人手不足は日本全体が抱える社会問題なのです。

製造業でも、人手不足が長らく課題とされてきましたが、近年はその傾向がさらに加速しています。なぜ人手不足は社会的な問題に発展しているのでしょうか。今回は、社会全体と製造業界の両視点から、人手不足の原因と対策について解説します。

参考:「人手不足倒産」の動向調査(2013~18年)

労働人口の減少や業界イメージの低下。人手不足の原因

課題を解消するとき、最初に行うべきは「原因の特定」です。原因を取り違えてしまうと、効果的な対策を講じることはできません。

製造業の人手不足が解消していない理由は、その原因が多岐にわたるからです。人手不足の原因は、企業単位や業界単位だけではなく、社会全体としても存在しています。さまざまな原因が組み合わさっているからこそ、人手不足の抜本的な解消が難しくなっているのです。まずは、人手不足が発生する代表的な原因をいくつか解説します。

原因1.「労働力人口の減少」と「東京一極集中」

社会的な人手不足に陥っている根本的な原因は、「労働力人口の減少」だと言われています。労働力人口とは、総務省統計局によると、「15歳以上の人口のうち就業者(休業者も含む)と失業者の合計」とされており、現職か否かに関係なく「働く意思のある15歳以上」とする解釈が多いです。

労働力人口の減少は、少子高齢化が進行している影響とされています。実際に、日本の人口推移と労働力人口をまとめた表が以下となります。

参考:「人口推計 / 長期時系列データ 長期時系列データ」総務省
参考:『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』国立社会保障・人口問題研究所

参考:「労働力調査年報」総務省
参考:「日本の将来推計人口」国立社会保障・人口問題研究所

国内人口が減っていくにもかかわらず、高齢化率(総人口に対して65歳以上の人口の割合)の上昇と、労働力人口の総数と割合も同時に低下しているのがわかります。これからも労働力人口の減少に拍車がかかると考えられていますが、ひとつの企業が、この問題の抜本的な対策を講じるのは簡単ではないでしょう。

また地方企業にとっては、「東京一極集中」も人手不足を加速させる原因となっています。東京一極集中とは、企業や産業、商業をはじめ、高等教育などが東京圏に集中している状況です。地方の若年層は進学や就職を機に上京する傾向にあり、昨今は20代後半〜30代の人も東京への移動が見られるなど、東京への過度な人口集中が発生しているのです。

参考:労働力調査 用語の解説
参考:「東京への一極集中の是正について」内閣府

原因2.ITなど新しい領域での「知識とスキルの不足」

労働力人口の減少にともない、人数自体が足りていないケースもありますが、「熟練の従業員がいない」状態を指す人手不足もあるでしょう。経営者が求める理想のスキルを有した、熟練従業員が不足している状態です。

従来の製造現場では、ほとんどの工程を手作業で行ってきた企業が多く、勤続年数の長い熟練従業員は難易度の高い作業を少ないミスで行えますが、熟練度の低い従業員は簡単な作業しか行えず、ミスも比較的多くなってしまいます。

また、近年は産業用ロボットやITの技術が進歩しており、こうした新しい技術について造詣の深い従業員が少ないことも「知識とスキルの不足」が生じている一因です。従来の手作業による知識やスキルであれば、社内で少しずつ育成していけば、徐々に熟練度を高めていけました。しかしIT知識などの新しい分野では、社内に教育を行える人おらず、育成がままならない現状も慢性的な人手不足を招いています。

原因3. 3Kに代表される「製造業界イメージの問題」

現在、労働力人口の減少のあおりを受けて、各企業、業界で人材の獲得競争が激しくなっています。また新しい産業も成長を続けており、「デジタルネイティブ」と呼ばれる若い世代の興味関心は、IT産業に移りはじめています。

企業は人材を獲得するために、「働きやすさ」を押し出した福利厚生や制度を整備するなど、求職者から選ばれるための努力が必要になってきています。しかし、製造業界は「きつい、汚い、危険」の総称である「3K」のイメージを払拭しきれておらず、典型的なライン作業などのルーティン作業への忌避感もあわさり、求職者に人気の業界とは言えないでしょう。

このように、「労働力人口の減少」や「現場の知識とスキル不足」、「業界イメージの問題」などに代表される原因が、人手不足を引き起こしていると考えられています。

人数増加と育成を両立する。これからの人手不足対策

人手不足を解消する最も一般的な方法は、採用活動を活発にすることです。求人媒体や採用サイトへの出稿を多く行えば、求職者に会社を知ってもらうことができ、人材の獲得につながりやすくなるでしょう。

しかし、人手不足は単純な「人数の不足」だけではなく、「スキルや知識をもった人材の不足」でもあります。人数の増加と人材の育成を両立するためには、どのような対策が考えられるのでしょうか。次に、現在期待されている人手不足対策をご紹介します。

対策1.社内環境を整備して離職を防止する

人手不足を解消するためには、「いかに人を増やすか」と同じくらい、「いかに人を減らさないか」も重要です。

経営資源の代表格である「ヒト・モノ・カネ」の中でも、特に重要なのが「ヒト」と言われるほど、現職の従業員は企業の宝です。退職者が出てしまうと、その人材にかけてきた教育費などの投資コストが無駄になってしまうだけではなく、空いた役職を補てんするために新しい人を採用したり、人材の再配置を検討したりする必要が生じ、企業にとって大きなマイナスとなってしまいます。

野村総合研究所による調査によると、退職する理由として多く挙げられているのが、対人関係と業務への不満です。社内の良い雰囲気を醸成する、業務課題を把握して改善に取り組むなど、社内環境を変えることで、退職者の数を減らすことができます。これからは新しい人材の採用が難しいからこそ、貴重な人材を減らさないための取り組みが重要です。

参考:「中小企業・小規模事業者の人材確保と育成に関する調査」株式会社 野村総合研究所

対策2.「生産性向上」と「属人性の排除」産業用ロボットやIT技術の活用

現在、社会的に最も注目が集まっているのが、「産業用ロボットやIT技術の活用」です。過去の産業用ロボットは対応できる業務領域が狭く大型であったことから、担当作業が明確に分けられていて、大きな工場を有している大企業しか活用できていませんでした。しかし、技術の進歩にともなって、ロボットの対応できる業務の拡大と小型化、低コスト化が進み、中小企業でも活用が可能になりました。

また情報処理技術も普及し、ロボットの稼働データをインターネットを通じて蓄積、管理することで、工場全体の稼働状況を最適化できる「スマートファクトリー」を実現する企業も現れています。

産業用ロボットやIT技術活用がもたらす代表的なメリットは「生産性向上」ですが、副次的なメリットとして「育成コストの低下」や「過酷労働からの開放」なども挙げられます。産業用ロボットの導入プロセスにおいて、各作業の分析や人とロボットの役割分担は必須です。これまで熟練者に依存していた作業をロボットに任せられれば、属人性の排除に加え、身体を酷使する作業を減らして、ロボットの点検など低負荷の作業に置き換えられます。

関連記事:リソースの有効活用やコスト削減。ロボットを工場に導入するメリット5選
関連記事:スマートファクトリーとは?メリット・デメリットを事例と一緒に解説

対策3.外国籍や女性など幅広い人材の活用

労働力人口が減少しているなか、これまでと同様の採用をしていても、十分な人手の確保は難しいでしょう。そこで企業が取り組むべきとされているのが、幅広い人材の活用です。

製造業では、長時間立ちっぱなし、重い製品を何度も持ち運ぶといった過酷労働がともなうこともあるため、その環境に耐えうる人しか従事することができませんでした。しかし、産業用ロボットやIT技術を活用することで過酷作業をなくし、ロボットの点検など低負荷の作業を創出できれば、女性や外国人労働者、高齢者でも雇用できます。

女性の社会進出や外国人労働者の増加は、これからますます進んでいくと考えられています。人手不足に悩む企業は、こうした人材が活躍できる社内環境の整備や、ロボットの活用を検討してみるとよいでしょう。

自社の課題に合わせた対策を講じると高い効果が得られる

人手不足は社会的な課題と深く関係しているため、一朝一夕で解決することはできません。しかし、原因を正しく把握できれば、効果的な対策を講じることができます。働く人の総数が減っているのであれば、幅広い人材の活用を目指し、スキルや知識不足であれば、育成の充実化などを行うとよいでしょう。

産業用ロボットの活用は、人手不足の解決策のなかでも、特に注目が集まっている手法です。ロボットにはさまざまなタイプがあり、それぞれ得意な作業が異なるため、自社の現場に最適なタイプを導入することで、高い効果を得ることができます。人手不足に悩んでいる際は、産業用ロボットの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

関連記事:産業用ロボットとは?主な5種類や事例、他のロボットとの違いを解説

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