2019/06/03

安全在庫とは?在庫管理を最適化して利益を上げる計算方法

安全在庫

生産管理を行ううえで、適切な在庫数を把握し、維持することは非常に重要です。在庫が多いと、保持しておくためのスペース確保をはじめとした、管理コストが発生します。一方、在庫が少ないと欠品を引き起こし、販売機会の損失にもつながります。

在庫管理を行う際に知っておきたい考え方が、欠品を防ぐ最低限の在庫量、「安全在庫」です。今回は余剰在庫と欠品を回避するために欠かせない安全在庫の基礎知識と、計算方法を解説します。

安全在庫とは「欠品を防ぐために保持しておくべき最低限の在庫数」

残前在庫とは

安全在庫とは、欠品を防ぐために保持しておくことが望ましい『最低限の』在庫数です。日本の工業製品に関するさまざまな規格を定めている「JIS規格」では、以下のように定義されています。

”需要変動又は補充期間の不確実性を吸収するために必要とされる在庫”

引用: 「生産管理用語」日本工業規格

製品の出荷数が在庫内で収まっていれば問題ありませんが、想定外の需要が突発的に生じると、部品の調達や生産が追いつかずに欠品が発生する可能性があります。安全在庫を設定しておくと、欠品を防げるほか、発注と生産のタイミングが明確になるだけではなく、現場の生産フローも管理しやすくなります。

ムダ削減、販売機会損失の防止、キャッシュフローの改善。安全在庫がもたらすメリット

安全在庫のメリット

安全在庫を設定して在庫管理を徹底する大きなメリットは、「ムダの削減」と「販売機会損失の防止」、「キャッシュフローの改善」です。次は、安全在庫がこうしたメリットを生む理由を解説します。

メリット1.余剰在庫によって生じるムダを削減できる

欠品を恐れるあまり、在庫を多く抱える「余剰在庫」は、倉庫のスペースを圧迫し、保管費のムダを発生させます。実際に自社工場内だけでは保管スペースが足りず、外部の倉庫を借りている企業もあるでしょう。しかし、借りるスペースが広くなるほど、管理コストは増大します。

また、多種多様な製品が倉庫内に散在していると、スムーズな出荷作業を阻害する要因にもなり得ます。整理整頓がなされていなければ、作業時間が増加する可能性もあるでしょう。多品種少量生産が主流になっている昨今、倉庫内の整理は、生産管理を徹底する上で重要な項目です。

安全在庫は、在庫のムダ削減だけでなく、余剰在庫によって生じる作業のムダ削減にもつながるのです。

メリット2.欠品による販売機会の損失を防ぐ

注文を受けてから製品を納品するまでには、部品調達、生産、出荷といった作業期間「リードタイム」が存在します。リードタイムの長さは顧客満足度に直結する要素です。そのため多くの企業では、あらかじめ在庫を保持しておくことで、リードタイムを短縮しています。

また、需要に多少の変動があっても欠品が発生しないように、ある程度の在庫を保持しておくことは一般的です。しかし余剰在庫への危惧から、在庫を少なくしすぎると、欠品に陥りやすくなり、販売機会の損失につながります。もし、安全在庫を明確に定めていれば、過剰在庫にも欠品にも陥らない最低限の在庫を維持できるようになるのです。

関連記事:リードタイム短縮が利益向上のカギ。納期短縮を実現するポイント

メリット3.余剰在庫の整理はキャッシュフローの改善につながる

余剰在庫によって多少の在庫コストが生じても、欠品による販売機会損失の回避を優先する考え方もあります。

しかし、在庫は販売して初めて利益が生まれるため、在庫を抱えるほどキャッシュフローが悪化します。在庫を販売しきれなければ、セール販売によって利益が減少したり、売れ残りが損失につながったりしてしまうのです。

余剰在庫や欠品を引き起こさない適切な在庫を維持できれば、キャッシュフローを円滑化でき、より多くの利益を生んだり、企業の財務状況を正確に把握できたりします。企業は在庫管理を行うだけではなく、効率よく販売する方法を考える必要もあるでしょう。

計算に必要な項目を理解する。安全在庫の計算方法

安全在庫の計算

これまでは安全在庫の概要や設定するメリットについて解説してきました。最後に、統計学の考え方を活用して、安全在庫を求める計算式をご紹介します。

安全在庫は、以下の計算式によって求められます。

安全在庫=安全在庫係数(安全係数)×標準偏差×√発注間隔+調達時間(リードタイム)

計算式に必要な3つの項目について、それぞれ確認してみましょう。

安全在庫係数(安全係数)

安全在庫係数とは、欠品を許容できる「欠品率」に対する数値を指します。欠品率とは、注文に対して商品を供給できなかった割合です。たとえば、100個の注文があったときに、95個しか納品できなかった場合、欠品率は5%となります。どこまでの欠品率を許容するのかによって、安全係数が変わります。

安全係数は、一般的に以下の値が使用されています。

欠品許容率(%) 安全係数
0.1 3.10
1.0 2.33
2.0 2.06
5.0 1.65
10.0 1.29
20.0 0.85
30.0 0.53

「欠品を絶対に起こしたくない」と考えている場合、安全係数が大きくなり、多くの在庫を抱えることになります。どのくらいの欠品を許容するかは、企業の方針や過去のデータを踏まえて決定するとよいでしょう。

標準偏差

「標準偏差」とは、変動している需要の平均値です。常に変動している需要を完璧に予測することは非常に難しいため、変動の平均値を採用することで欠品を防げるようにします。

標準偏差を求める際は、過去の販売量といったデータを参考にすると、より現実的な数値を算出できるでしょう。

発注間隔+調達期間(リードタイム)

材料を発注する日数間隔と、調達するまでの日数を合計し、リードタイムを算出します。

実際の計算例

たとえば安全係数が1.65、標準偏差が200個、発注間隔や調達にかかるリードタイムが16日の製品の安全在庫を算出する場合、計算例は以下となります。

項目 数値 備考
安全係数 1.65 欠品率5%の場合
標準偏差 200 1日目~16日目までの標準偏差
√発注間隔+調達時間 √16 リードタイム 


安全在庫の計算例

これらの数値を正確に求めるためには、日頃からの在庫管理が必須です。現在、在庫管理システムのMRP(Material Requirements Planning)やERP(Enterprise Resource Planning)を活用する企業が増えています。こうしたテクノロジーを活用して、日々の在庫管理を効率化していくとよいでしょう。

関連記事:生産管理のMRPとは?MRP2やERPへの変遷と取り組むときの注意点

安全在庫を算出して保持できる、効率的な現場を作る

在庫は多過ぎると知らず知らずのうちにコストが膨らんだり、キャッシュフローの悪化を招いたりします。一方、在庫が少な過ぎると欠品から販売機会を失います。こうした課題を解決するためには、安全在庫の設定が不可欠です。

まずは日頃から正確な在庫管理を行い、ムダと欠品を取り除くこ とを意識してみましょう。ムダと欠品の原因を探ってみると、実は現場の製造工程などに起因しているかもしれません。安全在庫を設定するためには、現場を包括的に見直してみることが重要です。

現在、在庫管理システムとあわせて、出荷作業を自動化してくれる「搬送ロボット」が注目されています。こうした産業用ロボットなども活用して、在庫管理の効率化を目指しましょう。

関連記事:物流工場を自動化する搬送ロボットとは。タイプ別の特徴や導入事例
関連記事:産業用ロボットとは?主な5種類や事例、他のロボットとの違いを解説

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