2019/02/25

工場の課題を改善する活動。「5S」のメリットと取り組みのポイント

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工場規模の大小にかかわらず、どんな工場でも「生産性をもっと上げたい」「ムダな時間を削減したい」といった課題を少なからず抱えているもの。こうした理想を実現するためには、実現を阻む課題を解消しなければなりません。

課題を解消するためには、まず原因を正しく把握して、適切な対策を講じる必要があります。課題の特定や対策を手探りで行うのもよいかもしれませんが、課題を解消する手法は、すでに確立された方法論を活用したほうが効果的です。

今回は、その中でも、工場現場の課題発見と改善に取り組むための手法である「5S」について、その概要やメリット、取り組みの際のポイントなどを解説します。

当たり前のことを意識的に取り組むための「5S活動」

5Sとは、「整理、整頓、清掃、清潔、躾(習慣)」のローマ字の頭文字「S」を取った造語です。現場が抱える課題の発見や改善だけではなく、良好な環境を維持するための活動を指しています。

5Sそれぞれの項目について、一般的な定義をまとめたのが以下の表です。

整理 必要なものと不要なものを分け、不要なものを捨てる
整頓 必要なものをすぐに取り出せる置き場所や配置を決め、表示を確実に行う
清掃 身の回りのものや機械設備を綺麗に掃除し、細部まで点検する
清潔 整理・整頓・清掃を徹底して行い、汚れのない綺麗な状態を維持する
躾(習慣) 決められたことを決められたとおりに実行できるように習慣化する

一つひとつの項目は特別な意味や新しい概念はなく、日常的に心掛けるべき事柄にすぎません。しかし、「整理とはどのような行動を指すのか」「整理と整頓の違い」まで、明確に意識して行動できる人は多くないでしょう。

5S活動の強みは、曖昧になりやすいそれぞれの項目における行動内容を明確化し、経営者と従業員の目線を揃えた上で、現場の課題解消に取り組めることにあるのです。

事故リスク低減とムダ削減。5S活動の徹底で得られるメリット

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5Sそれぞれの項目は、いわば「当たり前」の行動です。実際、すでに整理整頓や清掃に力を入れている企業も多いでしょう。しかし、従業員が「整理整頓などの雑務をやらされている」と感じている現場では、掃除の手を抜いたり、そもそも実施しない人がいるかもしれません。

現場で働く従業員に「整理整頓や清掃もしっかり行わなければいけない」と当事者意識を持ってもらうためには、業務内容を伝えるだけではなく、どんなメリットがあるのかも伝えるとよいでしょう。

5S活動を現場に浸透させる際は、管理者が5S活動のメリットを正しく理解し、従業員に伝えていくことが重要になります。次は、5S活動のメリットを解説します。

整理・整頓・清掃は「事故リスク低減」につながる

工場現場は危険に溢れています。産業用ロボットのような大きな機械設備をはじめ、小さな工具ですら、少しの不注意から大きな事故に発展するリスクがあります。厚生労働省が発表した労働災害統計を参考に、製造業の原因越の事故件数を以下にまとめました。

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参照:労働災害統計(平成29年)

数ある事故の中で最も多かったのが「はさまれ・巻き込まれ」といった大型の機械と接触してしまったケースです。次いで多かった事故が「転倒」です。工場現場における転倒は、視界不良や不安定な足場などに起因するため、作業環境を改善することで事故リスクを低減できます。

5S活動は、こうした事故リスクの低減に特に効果的です。「整理」で現場で不要なものを処分し、「整頓」で必要なものを適切な場所で管理、「清掃と清潔」では、掃除をはじめとした快適な作業環境の維持と設備点検を行うことで、事故リスクの削減が期待できるでしょう。

関連記事:産業用ロボットの事故件数が増加中。事例と責任の所在を解説

探しものに悩む時間を無くす。ムダ削減による生産性向上

どんな企業でも求められる「ムダ削減」といった課題も、5S活動で改善できます。5S活動で解消できるムダの代表例が「ものを探す時間」です。

たとえば工具が見つからない場合、本来作業できる時間を「探すための時間」として浪費してしまいます。さらに、実際に現場で探しものがあると、ほかの人に相談するケースがほとんどです。探しものにかかわる人が増えれば、現場の生産性はそれだけ低下してしまいます。従業員一人ひとりに発生する「1日の探す時間」は短くても、1ヶ月や1年の長期的な視点をもつと、ムダになっている時間は決して少なくないでしょう。

整理段階で不要なものを処分すると、「必要なものだけ」がある環境を作れるため、ものを探すために行動する時間が無くなります。また、整理整頓されることで、「あの工具どこだっけ?」といった悩む時間も削減でき、探しものに費やしていた時間を本来行うべき生産活動に使うことができるのです。

体制の整備や経営者の姿勢が重要。5S活動に取り組む際のポイント

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5Sに取り組むと「事故リスク低減」や「ムダ削減」といったメリットが得られます。しかし、整理整頓や清掃といった当たり前の行動を徹底することは、案外簡単ではありません。業務における安全確保や生産性アップによる利益還元など、従業員目線でのメリットを伝えることも一つの方法ですが、これだけでは不十分でしょう。

最後に、すでに5S活動に取り組んでいる企業だけではなく、これからはじめる企業でもより効果的に5S活動を実施するためのポイントを解説します。

ポイント1.現場から経営者まで取り組める体制や仕組みを整える

5S活動は、全社をあげて取り組まなければ効果が薄れてしまいます。一人でも取り組めない人が出てしまうと、「やらなくていい」雰囲気が醸成されてしまい、取り組まない人が連鎖的に増えてしまいます。

負の連鎖を防ぐためには、「整理・整頓・清掃・清潔・躾(習慣)」それぞれの項目で、具体的にどのような行動を取るのか規定するとよいでしょう。その際、「ベテラン社員だけではなく、若手社員でも無理なく取り組める」行動内容にすることで、全員が当たり前に取り組める状態を作れます。

各行動内容の策定や現場への浸透を行うときは、「推進者」を選定すると、取り組みをスムーズに行えるでしょう。推進者は、整理の際に何が本当に必要なのか、処分できるものがないのか現場からヒアリングを行ったり、整理したものをどのように整頓したほうがいいのか考えたりするなど、経営と現場をつなぐ役割が求められます。

また5Sに取り組む際は、現場の推進者だけでなく、経営者が率先して動く姿勢も重要です。経営者は体制構築やプロジェクトの推進に加え、取り組み内容を自ら進んで実行するなど従業員の規範となる行動を取ることで、現場の理解も得やすくなります。

ポイント2.目的や効果を見える化しつつ、常に改善する意識を持つ

仕組みを整えることも大切ですが、「整理をやっているだけ」という感覚に陥らないように、5S活動に取り組む「目的の明確化」も同じくらい重要です。実施する意味や効果を明確化、数値化することで、目的達成に近づいているか検証できるようにしましょう。実施効果が数値化されると、施策が上手く作用しているかどうか計測でき、改善策を講じる手がかりになるのです。

5Sの「整理、整頓、清掃、清潔、躾(習慣)」は、行動サイクルでもあります。整理が終わってはじめて整頓ができ、整頓された状態を保つために清掃や清潔があり、これを習慣化することで、5Sが成り立ちます。それぞれの項目ごとの効果検証と改善を行うことで、5S活動に取り組む目的の達成に近づくことができるのです。

効果検証をするためには、それぞれの工程で「目的の明確化」と「指標化」が必要です。5S活動に取り組む前の事故発生件数や原因との比較、労働生産性の変化など、目的に応じた計測可能な指標を据え、常に検証しながら改善する意識を持つことで、5S活動による効果を最大化できるのです。

目的に応じて「仕組み」や「設備」を使い分ける

工場現場には、数多くの課題が存在します。その中でも、「事故リスク」や「生産性向上」の課題は特に根強く、さまざまな対策が講じられています。「整理、整頓、清掃、清潔、躾(習慣)」の総称である「5S」は、基本的な活動でありながら、徹底して実施することで、こうした課題を改善できます。

5S活動に取り組む際は、「当たり前の行動」として現場に押し付けるのではなく、体制を整えたり、目的達成や効果検証できるように指標化や改善を行ったりするなど、経営者自らが率先して取り組む姿勢が重要になります。

また、工場の課題を改善する手法として、産業用ロボットにも注目が集まっています。作業を自動化することで、生産性向上や過酷労働からの解放などが見込めるからです。昨今は、産業用ロボットの小型化や低価格化が進んでいるため、中小企業でも導入可能になったことも注目が集まる要因でしょう。5S活動のような「仕組み」と、ロボットのような「設備」を、改善したい課題や目的によって使い分けることで、高い効果が得られるはずです。

関連記事:産業用ロボットとは?主な5種類や事例、他のロボットとの違いを解説

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