2019/03/04

【RPA解説・基本編】AIやSaaSとの違いやメリットとは?

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現在の日本企業は、人口減少による人手不足や、外国人労働者や女性、高齢者といった多様な人材の有効活用など、多くの課題を抱えています。こうした課題の解決策として注目が集まっているのが、テクノロジーを活用した業務効率化です。

「ブルーカラー」と呼ばれる、製造現場で働く従業員の業務効率化では、産業用ロボットやIoTが活用されはじめています。そして、デスクワークを担当する「ホワイトカラー」の従業員は、ソフトウェアを用いて、業務の自動化と効率化が進められています。

今回は、デスクワークの業務効率化として期待が寄せられている「RPA」と呼ばれる概念やツールをご紹介します。本メディアでは、RPAを複数回にわたって取り上げる予定です。第1回は、「RPAの基本」について、RPAの仕組みやAIとSaaSの違い、メリット・デメリットから、簡単な事例まで解説します。

RPAとは?広義と狭義による意味範囲の違い

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RPAとは、「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略語です。広義と狭義のふたつで意味する範囲が異なります。

広義のRPAは、間接部門の定型業務の自動化を指す「概念」です。一方、狭義でのRPAは、業務効率化のソフトウェアを指し、「RPAツール」と呼ばれます。「RPAを実現するのがRPAツール」という考え方がわかりやすいでしょう。

RPAツールは、ソフトウェア内で「ロボット」と呼ばれるプログラムが、これまで従業員が行っていた定型業務を代行する仕組みになっています。この定型業務を代行するプログラムを、仮想知的労働者をあらわす「デジタルレイバー」と呼ぶこともあります。RPAツールを活用することで、売上をはじめとした数値の入力や、データにもとづいたレポート出力といった、定型業務の自動化が可能になるのです。

「RPA」と「RPAツール」を区別せずに議論されるケースも多いため、概念とツールのどちらの意味として扱われているのか注意が必要です。

3段階に分かれる業務効率化・自動化。RPAとAIの関係性

RPAの概念によると、業務効率化・自動化には3段階あるとされています。実は、RPAはその第1段階を指しているのです。それぞれの段階は「Class(クラス)」として分けられており、クラス毎に名称だけではなく、自動化される業務範囲や、AIの学習、対応能力も異なります。

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参照:『Robotic Process Automation(RPA) AIやロボティクスの発達によるホワイトカラー業務自動化の時代へ』KPMG

上の図は、3段階それぞれの特徴と採用されている技術、特徴などをまとめたものです。RPAツールとAIが同一視されることが多いものの、両者が異なるテクノロジーであることがわかります。

RPAツールは、主に「AのときはBする」といった分岐処理を行う「ルールエンジン」と、その分岐処理を可視化するワークフローをもとに構成されます。一方、AIの役割は、機械学習によって得た膨大な蓄積データを活用して分岐処理を高速で行ったり、不規則なデータ処理を可能にしたりするなど、RPAツールを補完することです。

段階が進むたびに高度な技術が採用され、対応領域が広がっていきます。次は、こうした段階毎の特徴について、解説します。

Class1 RPA:定型業務を自動化してくれるが対応力はない

Class1は、業務効率化・自動化のための第一歩であり、現在多くの企業が取り組んでいる「RPA」そのものです。この段階で利用されるRPAツールは、これまで手作業だった定型業務を自動化してくれるルールエンジンが一般的です。

しかしこのテクノロジーは、少しでも処理ルールから外れたり、エラーや例外的な処理が発生したりすると、人によるフォローが必要になるため、「完全な自動化」からは遠いと言えます。

Class2 EPA:AIが蓄積したデータを活用して自動化領域を拡大する

RPAよりも業務領域をひとつ上げた段階が、Class2のEPA「Enhanced Process Automation(エンハンスド・プロセス・オートメーション)」です。アップデートの意味を持つ「Enhanced」の通り、RPAツールだけではなくAIを活用することで、ルール化や構造化が行われていないデータの処理や、機械学習による簡単な判断まで自動化できるようになります。

一部の先進的な企業が取り組んでいる段階であり、技術やノウハウが広く普及するまでもう少し時間がかかるでしょう。

Class3 CA:人間に近いAIがデータ処理だけでなく、分析や意思決定も行う

業務効率化・自動化の最終段階が、CA「Cognitive Automation(コグニティブ・オートメーション)」です。Class2で使用されているAIよりも、さらに高性能なAIを使用することで、非定型業務の実行だけではなく、データの分析や人間と同水準の意思決定まで行える状態を指します。

この段階はあくまで業務効率化・自動化の理想形とされていますが、遠くない未来にClass3まで到達する企業が現れると言われています。

「オンプレミス」か「クラウド」か。SaaSとの違い

また、近年注目が集まっている業務効率化ツール「SaaS(サース)」との違いについても解説します。SaaSは「Software as a Service」の略語であり、クラウドで管理されているソフトウェアを必要な機能だけ借りられる点が特徴です。RPAツールとSaaSのどちらも業務効率化ツールではありますが、両者の違いはサービス形式にあります。

一般的にRPAツールは、サーバーやネットワーク、ソフトウェアを自社で導入、運用するオンプレミス型であり、高いカスタマイズ性と引き換えに、運用コストが高くなるデメリットがあります。一方SaaSは、サービス事業者が自社サーバーで管理しているため、導入企業の運用コストが小さい代わりに、カスタマイズ性ではRPAツールに劣ります。それぞれの違いを簡単にまとめたのが、以下の表です。


  RPAツール SaaS
サービス形式 オンプレミス型 クラウド型
カスタマイズ性 柔軟 不自由
運用コスト 高い 低い
担当者 RPA専任 現担当者

また昨今、RPAツールとSaaS双方の強みを持った「ハイブリッド型」のサービスも登場しているため、それぞれの違いや特徴について、把握しておくとよいでしょう。

間接部門の効率化を促す。RPAの主なメリット・デメリット

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これまで、RPAツールで業務効率化が実現できることをご紹介してきましたが、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。また、デメリットもあわせてご紹介します。

メリット1.単純作業が減り、付加価値業務に多く取り組める

最もわかりやすいメリットは、RPAツールによるルーティン作業の自動化による、生産性向上です。データの入力や管理は、企業の経営状況を把握するために必要不可欠な作業ですが、売上や利益を生みません。こうした単純作業を自動化できれば、バックオフィスの従業員も社内環境の改善策を考えたり、データを分析したりといった「人でしかできない作業」付加価値業務に時間を費やせるようになります。

メリット2.人的ミスを削減できる

数値入力などの単純作業は難易度が高くないからこそ、長時間業務によって集中力が低下してしまい、初歩的なミスを起こしてしまうこともあるでしょう。RPAツールは、扱うデータにエラーがなければ、高速かつ正確に作業を行ってくれるため、人的ミスの削減にも貢献してくれます。

デメリット.RPAツールの最適化に専門知識が必要

RPAツールは、一般的に自社で購入し、社内業務のルール化や分岐処理の設定といった、システム構築が必要です。また、運用に乗ったあとにエラーが発生した際は、人の手による対応が必要となるため、専門知識を有した人材の雇用や育成も欠かせません。

さまざまな業務領域で活躍。RPAツールの活用事例

定型業務の自動化が特徴のRPAツールを活用し、業務の効率化を実現した企業の事例をご紹介します。どのような課題を抱えており、どのような効果を得られたのでしょうか。

事例1.データ収集にかける時間を大幅に削減

自社製品のPOSデータ収集のために、担当者が卸先企業でそれぞれ異なるPOSシステムにアクセスし、手動で条件設定した上でデータ収集を行っていました。しかし、50社ほどある企業から全てのPOSデータを収集するために膨大な時間を費やしてしまっていました。そこで「同じ動作を高速かつ正確に行える」RPAツールに注目。導入に踏み切ったところ、70%近い業務時間の短縮に成功しました。

引用:『マルコメ株式会社 SynchRoid活用事例』SoftBank

事例2.システムテストにかかる膨大な工数を削減

数多くの電化製品を製造している企業では、製品の動作テストが欠かせません。新しいソフトウェアを開発する際、1日長時間の動作を長期間続けるテストを実施。人の手を動かすことなく、RPAツール上でテストを実行できるようになり、これまでテスト作業に携わっていた担当者が付加価値の高い作業を行えるようになりました。

引用:生産部門が主導となり、短期間でRPAを導入~運用に成功。社員では対応しきれない業務量を“ロボ子”が解決!NEC Software Robot Solution

ツールの特徴をふまえて、バックオフィスが自ら業務効率化に取り組む

デスクワークの業務は、製造現場の業務ほど、業務効率化の必要性を感じないかもしれません。しかしテクノロジーが発達した現在、システム構築がわかりやすくなったり、AIと組み合わせることで自動化できる業務が増えたりするなど、デスクワーク業務の多くがソフトウェアで効率化できるようになってきています。

バックオフィスの従業員は、直接的な利益は生み出せないものの、会社を根幹から支える重要な役割を担っています。生産性向上の旗振り役でもあるバックオフィス自身が、業務効率化に率先して取り組むことで、社内の雰囲気を醸成できるでしょう。

はじめて業務効率化に取り組む際は、RPAツールやSaaSといったツールの理解に努め、自社に適したものを選択することで、効果を最大化できるはずです。

関連記事:【RPA解説・導入編】業務効率化を成功させる導入計画の流れと注意点

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