組み立て作業が得意!水平多関節ロボットの歴史やメリット、事例を全て紹介

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近年、製造現場においてニーズが高まっている産業用ロボット。人手不足やコスト上昇など、様々な課題を解決するものとして期待されています。

いくつかの種類がある産業用ロボットのうち、自動組み立て作業に適しているのが水平多関節ロボットです。日本で開発されたシンプルな構造のロボットで、通称スカラロボット。全世界で活用されているロボットの一つです。

では、水平多関節ロボットはどのように生まれ、どのように使われているのでしょうか。構造や特徴、メリットなどを具体的な導入事例とともに解説します。

現場のニーズに対応する水平多関節ロボットは日本で生まれた

水平多関節ロボットは、1980年に日本で開発されたSCARA(スカラ)ロボットが原型になっています。それまでの自動組み立てロボットは、大量生産品には有効だったものの、多種少量生産の現場には向いていませんでした。そのため、多くの種類に対応できるロボットの開発が必要とされていました。

山梨大学の牧野洋教授(当時)を中心とする研究会は、そのニーズに応えるため研究を重ねてSCARAの製作に着手。SCARAをもとに、研究会に参加していた企業が自社製の市販モデルを作り始め、水平多関節ロボットが誕生しました。

明確な用途にもとづいて考案された水平多関節ロボットは、まさに業界に求められていた実用的なロボットとして、世界中で使用されています。日本独自の研究が生んだ重要な産業用ロボット、それが水平多関節ロボットなのです。

水平面上をスムーズに移動する「屏風型」の構造

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水平多関節ロボットはその名の通り、水平方向の動きに重点が置かれています。原型となるSCARAを開発した牧野教授は、「自動組み立て作業は部品の挿入が中心になる」という考えにもとづき、垂直方向には強度が高く、水平方向にはしなやかに動く屏風のような構造をイメージしていました。

こうした発想から生まれた水平多関節ロボットは、関節の回転軸すべてが垂直に組まれ、アームの先端が必ず水平方向に移動する構造です。位置が定まったところで先端部が上下に動くようになっているため、平面的な作業に適しています。

水平多関節ロボットは、ほかの多関節ロボットに比べるとシンプルな構造ですが、自動組み立て作業で大きな効果を発揮します。部品をつかんだロボットアームの先端が水平面内を高速で移動できるため、センサーを用いて部品の位置ズレを補正しながら、自動的に組み立て作業を行えます。

水平多関節ロボットは水平方向への柔軟性を生かして部品の挿入や配置、ねじ締めといった幅広い用途で利用され、組み立て作業の自動化に大きく貢献しています。

導入と管理のしやすさが水平多関節ロボットのメリット

組み立て作業を用途として開発された、シンプルな構造を持つ水平多関節ロボット。実際に製造現場に導入する上で、どんなメリットがあるのでしょうか。

水平多関節ロボットは垂直多関節ロボットなどと比べると小型であるため、省スペースで稼働できます。広い設置場所を用意する必要がない上、ロボットを中心に円を描くように動作するため、ロボットの周りにほかの装置をレイアウトすることが可能。近年ではサーボモータの性能向上に伴って、ますます小型化・大出力化が進み、重量物の搬送も可能になってきました。

また、動作管理も容易になっています。これまでは、専用ツールでティーチングを行うのが一般的でしたが、最近はパソコン上でティーチング可能なものが増え、より操作性が高くなっています。

さらに、安価であることも魅力です。水平多関節ロボットは構造がシンプルなため、他のロボットと比べると低コストで抑えることができます。費用の問題が解決できれば、これまで導入をためらっていた企業にとって金銭的なハードルが大きく下がるといえるでしょう。

幅広い用途で活用され生産性向上に貢献

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製造業のニーズに応えるかたちで開発された水平多関節ロボットは、さまざまな製造現場で活用されています。実際にロボットを導入し、品質の安定化やコスト削減などを達成した事例をご紹介します。

引用:ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2017
引用:ロボット実証事業事例紹介ハンドブック2016

1.ITシステムとの連携で実現した「自動化ライン」

メイクアップ化粧品の仕上げ・包装を担うある工場では、これまですべての生産を手作業で行っていました。包装形状やデザインを頻繁に変更するため、生産能力や品質保証力に不安を抱えており、自動化ラインを導入します。

ロボットとITシステムを組み合わせた自動化ラインには、搬送工程に高速のリニアコンベアを採用。資材・製品の移載とピックアップの工程には水平多関節ロボットを取り入れました。水平多関節ロボットのしなやかな動きと精度の高いハンドリングは、リニアコンベアの高速ラインでも効果を上げ、生産能力を確保。同時に、各種検査工程では画像処理技術を導入し、品質保証力も向上させることに成功しました。

2.安定した動作による「箱詰め」

単純作業に見える箱詰めですが、製品を破損させることなく正確な数量で詰めていく作業は、想像以上に難易度が高いもの。この工程をロボット化することによって、人手不足の解消につなげることができます。

進物用クッキーの箱詰めを行う工場では、手作業で行っていた箱詰め工程に水平多関節ロボットを導入しました。包装済みのクッキーを手早くきれいに箱詰めする作業は、熟練の作業者でなければ難しく、人材の確保や品質のばらつきが課題でした。しかし、定ピッチで箱を送り、ロボットにクッキーを1列ずつ箱詰めさせることで、省人化と品質の安定化が可能になりました。

このケースでは、水平多関節ロボットが省スペースかつ安価であったことも成功のポイントです。この工場では、自社技術による簡単な構造の装置を設計し、ロボットの導入コストをさらに抑えることができたということです。

3.ほかの高性能ロボットと併用で行う「はんだ付け」

水平多関節ロボットの特徴をうまく活かしながら、他のロボットと組み合わせることで大きな効果が発揮され、作業工程の短縮が実現した事例もあります。

車載部品を生産する工場では、高い品質の維持とともに、コスト削減が課題でした。そこで、工程の統合によってコストを抑えつつ品質を保つため、2台のロボットを導入してはんだ付けを自動化します。

高速で精度の高い垂直多関節型ロボットと、繰り返し精度に優れ垂直方向への強度の高さを持つ水平多関節ロボット。この2台を併用することによって、従来の4工程を1工程へ統合することが可能になり、品質の向上と安定化も図れるようになりました。作業効率がアップすれば、課題であったコスト削減にもつながります。

水平多関節ロボットの特徴を理解して上手に取り入れる

今回は、水平多関節ロボットの構造や用途、メリットなどをご紹介してきました。産業用ロボットの導入によって製造現場の課題解決を目指す企業にとって、水平多関節ロボットは価格が低く小型であることから、導入が比較的容易なロボットといえるでしょう。

このようなメリットもありますが、水平多関節ロボットは水平方向の動きを重視した構造であるため、必然的に垂直方向の動作は苦手としています。また、高い精度が求められる細かい作業には向かない場合も。導入の際には、対象作業に水平多関節ロボットが適しているかどうかよく検証しましょう。

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