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自動化システムを導入する前に。産業用ロボットの定義と流行の背景を知ろう

自動化システムを導入する前に。産業用ロボットの定義と流行の背景を知ろう

産業用ロボットは、人材不足や作業熟練度の差による品質のバラ付きなど、製造業界が抱える課題を包括的に解決してくれる手段として、以前から注目が集まっていました。しかし、2013年以前は大きな成長はなく、広く普及するには至っていませんでした。現在、産業用ロボットの需要が増えているのは何故でしょうか。今回は、産業用ロボットの定義から振り返りつつ、需要が拡大した背景をご紹介します。

工場を自動化してくれる産業用ロボット。そんな産業用ロボットの市場規模は2013年の約1000億円から毎年成長を続けており、2017年は約1500億円に達すると見込まれています(※)。

産業用ロボットは、人材不足や作業熟練度の差による品質のバラ付きなど、製造業界が抱える課題を包括的に解決してくれる手段として、以前から注目が集まっていました。しかし、2013年以前は大きな成長はなく、広く普及するには至っていませんでした。

現在、産業用ロボットの需要が増えているのは何故でしょうか。今回は、産業用ロボットの定義から振り返りつつ、需要が拡大した背景をご紹介します。

(※)参考:『産業用ロボット市場の動向』三井住友銀行

JISの定義からみる「産業用ロボット」

ロボット市場は大きくふたつに分けられます。一つ目は「サービスロボット市場」、二つ目が「産業用ロボット市場」です。日本工業規格(JIS)の「JIS B 0134:2015」によると、産業用ロボットは以下のように定義されています。

自動制御され、再プログラム可能で、多目的なマニピュレータであり、3 軸以上でプログラム可能で、1 か所に固定して又は移動機能をもって、作業自動化の用途に用いられるロボット

マニピュレータとは、物を掴んである程度自由に動かせる機械を指します。つまり産業用ロボットとは、工場の生産ラインで、人が行っている作業を自動化するために活用されているロボットのこと。垂直多関節ロボットは代表的な産業用ロボットであり、動作の自由度が高いため、さまざまな工場で活用されています。

産業用ロボットに携わる人は特別な講習を受ける必要アリ

こうした産業用ロボットを活用すれば作業を自動化できるため、生産性向上が見込めます。しかし、メリットだけでなくリスクがあることも忘れてはいけません。ロボットによる事故は、人為的な事故よりも大きな被害を引き起こす可能性があります。

そのため、産業用ロボットの業務に携わる人は、産業用ロボットにまつわる教育を受けることが法律で定められています。

事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働 省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない(労働安全衛生法第59条第3項)

この教育は、各都道府県の労働基準協会連合会が実施している「産業用ロボットの教示、検査等特別講習」で受けられます。この講習を修了した人は、「産業用ロボットへの教示等作業者」の資格が与えられ、産業用ロボットの業務に携わることが可能です。

この講習は、それぞれの都道府県で実施日が異なります。そのため、講習に参加する場合は、実施日の事前確認が必要です。産業用ロボットを安全に利用するためにも、必ず講習を受けるようにしましょう。

産業用ロボットが普及した理由は「規制緩和」と「金銭的コスト低下」

製造業の人材不足は業界の深刻な課題として挙げられており、産業用ロボットがひとつの解決策になると注目されていました。しかし、近年の需要拡大まで、普及が順調に進まなかったことも事実です。

産業用ロボットには、普及が進む大きな転換点がありました。その転換点が「規制の緩和」です。この規制緩和は、現在注目が集まっている「協働ロボット」が生まれたきっかけでもあります。

現在の需要拡大は、「規制緩和」と「金銭的コストの低下」が大きな要因として考えられているので、これらについてそれぞれ解説します。

安全規制の緩和で人とロボットが一緒に作業できるように

2013年12月以前、産業用ロボットを安全に利用するために、「労働安全衛生規則第150条の4」は、産業用ロボットの安全対策について以下のように規定していました。

産業用ロボット(定格出力が80Wを超えるもの)に接触することにより危険が生ずるおそれがあるときは、さく又は囲い等を設けること

つまり、80W以上の出力をもつロボットを活用する際は、ロボットを安全策で囲って作業スペースを人と隔離する必要がある、と定めています。そのため、産業用ロボットの導入をスポットで行えず、導入する場合は生産ライン全体を自動化する必要があり、非常に大きなコストがかかっていました。

しかし、2013年12月にこの安全規則が緩和されました。「ロボットメーカー、ユ ーザーが国際標準化機構(ISO)の定める産業用ロボットの規格に準じた措置を講じる」など、一定の安全条件を満たせば、人とロボットが同じスペースで作業できるようになったのです。このため、限られたスペースで柔軟な生産ラインを構築できるようになりました。

さらにロボットの性能も向上し、熟練度の高い作業員にしかできなかった作業も行えるようになったことから、人とロボットで作業分担が可能になり、協働ロボットが生まれたのです。

行政による助成金支給や、ロボットが安価になったことで金銭的コストが低下

産業用ロボットの普及が進まなかった理由として、金銭的なコストが高かったことも大きな要因です。

規制が緩和される前はスポットでの導入が難しく、生産ライン全体を自動化しなければならなりませんでした。そのため、大規模な予算を用意できる大企業しか導入できませんでしたが、規制が緩和されてからは、課題を抱えている作業にスポットでの導入が可能になりました。

とはいえ、中小企業にとって、ロボット導入は簡単に手が出ない投資です。このような金銭的な問題で産業用ロボットを導入できない中小企業に対して、行政がサポートを開始。条件を満たした中小企業に対して助成金を支給する制度を制定しました。

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また、ロボットメーカーの企業努力もあり、低価格帯のラインナップが増えたことも普及に大きく貢献しています。

このような背景から、大企業だけでなく中小企業にとっても、産業用ロボットの導入は現実的な課題解決施策として考えられるようになりました。

産業用ロボットを正しく理解して、効果を最大限引き出す

今回は、産業用ロボットの概要や普及した背景だけでなく、協働ロボットについても簡単にご紹介しました。導入を検討している場合、産業用ロボットについて正しく理解しておくと、導入効果を最大限引き出しながら、安全に活用できます。

産業用ロボットの導入は、今では企業規模にかかわらず一般的な施策です。自社工場に課題を感じている場合は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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