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アメリカで生まれ日本の高度経済成長を支えた。産業用ロボットの歴史

アメリカで生まれ日本の高度経済成長を支えた。産業用ロボットの歴史

人手不足を補い、生産性を向上させるメリットのある産業用ロボットは製造業界に浸透つつあります。しかし現在にいたるまで、産業用ロボットの普及は決して順風満帆とはいえませんでした。今回は産業用ロボットの歴史に注目し、これまでの軌跡を振り返ります。

人手不足を補い、生産性を向上させるメリットのある産業用ロボット。国際ロボット連盟(IFR)の調査によると、2017年の産業用ロボットの世界的な販売数は34万550台であり、前年より29%も増加していることが明らかになりました。

調査結果からわかる通り、産業用ロボットは製造業界に浸透つつあります。しかし現在にいたるまで、産業用ロボットの普及は決して順風満帆とはいえませんでした。今回は産業用ロボットの歴史に注目し、これまでの軌跡を振り返ります。

参考:国際ロボット連盟

「ロボット」の語源はチェコ語。「強制労働」を表す言葉だった

現在、当たり前に使われている「ロボット」という言葉が生まれたのは、1920年です。チェコの作家、カレル・チャペックの作品の中で登場したことがきっかけとされています。「ロボット」は「強制労働」を意味するチェコ語が由来になっており、当時のロボットに対する認識は「使われるもの」にとどまっていました。

現実のロボット工学にも影響している、「ロボット三原則」

さらに、チャペック作品の中ではロボットの反乱が描かれており、「ロボットは反乱する可能性を含む危険なもの」というイメージが長く定着することになります。そのイメージが大きく変わったのは、SF作家アイザック・アシモフの作品で言及された「ロボット三原則」がきっかけでした。

「人間に危害を加えてはならない」、「人間に服従しなければならない」、「自己防衛をしなければならない」といった考え方は、現実のロボット開発においても重要視されています。

時代と需要の合致が生み出した、産業用ロボットの歴史

では、現実世界の産業用ロボットとは、いつの時代に生み出されたものなのでしょうか。その起源と日本への影響を見てみましょう。

産業用ロボットの歴史はアメリカで幕を開けた

産業用ロボットの起源は、1950年代のアメリカに遡ります。誕生のきっかけになったのは、アメリカの技術者、ジョージ・デボルが指示通りに動くロボット「ブレイクバックロボット」のアイデアを1954年に特許を出願したことです。一度記録させた動作を繰り返し行うブレイクバックロボットは、簡易的なものであったものの、操作するために専門的な知識や訓練を必要としない点が画期的でした。

その後、ブレイクバックロボットの特許はアメリカの事業家、ジョセフ・エンゲルバーガーに買い取られます。技術者でもあったエンゲルバーガーは、偶然にも開発者のデボルと出会い、アシモフのSF作品を愛読していたふたりが意気投合するのに時間はかかりませんでした。エンゲルバーガーとデボルはともに世界初の産業用ロボットの製造会社、ユニメーション社を設立、1959年に産業用ロボットアーム「ユニメート」を販売します。

ユニメートは人件費が高まりつつあった時代背景に後押しされたこともあり、自動車メーカー最大手のゼネラルモーターズ社の工場に導入されます。また、AMF(American Machine and Foundry)社が開発した円筒座標産業用ロボットの「バーサトラン」も同時期に開発され、ユニメートと同様に自動車工場へ導入されます。こうして産業用ロボットに注目が集まり、世界規模で工場の機械化・自動化が推進されていくのです。

高度経済成長を迎えた日本と、さらなる発展を遂げた産業用ロボット

さらなる産業用ロボットの発展に向け、エンゲルバーガーは日本への進出を考えます。1960年代の日本は高度経済成長期を迎えていたものの、人手不足が産業界の大きな課題として経営者を悩ませていました。こうした背景もあり、エンゲルバーガーが来日して行った産業用ロボットの講演には多くの経営者が参加。やがてユニメーション社は川崎重工と技術導入契約を締結し、日本でも産業用ロボットが広く普及されることとなりました。

時代が変われば需要も変わる。産業用ロボットの変遷

今でこそ製造業関係者から認知や理解を得ている産業用ロボットですが、現在ほど理解が浸透するまでには多くの困難が見られました。

技術革新が導いた普及のきっかけ

高度経済成長時の日本ではモータリゼーションが著しく、自動車の需要が急激に高まっていました。そのため、輸入当初の産業用ロボットは自動車のスポット溶接時に多く用いられていました。マイカーを持つことを熱望した人々が自動車を買い求めるため、自動車工場はロボットを導入して生産性を上げなければいけなかったのです。ただ、当時の産業用ロボットは導入・運用コストが膨大であり、容易に導入に踏み切れないのも事実でした。

初期の産業用ロボットは、大きな力を生み出しつつ機体の大きさを抑えることを重要視していたため、「油圧・空圧アクチュエーター」を動力として用いていました。しかし技術革新によって、モーターの性能が向上し、電力を動力源とする「電気サーボ」でも高い出力が得られるようになりました。電気サーボは安価かつメンテナンスが簡単だったため、これまでの動力源に取って代わり、主な動力として採用されるようになったのです。

こうした技術革新によって、産業用ロボットは低価格化と小型化が年々進み、多くの企業で導入されるようになりました。さらにオイルショックで高騰化した原材料費への対策として、生産性を向上させる産業用ロボットは無くてはならない存在になっていったのです。

バブル崩壊が招いた産業用ロボットの受難

1980年代から、日本経済は安定した成長を続けます。自動車製造を中心に産業用ロボットはますます導入が進み、日本は経済大国の仲間入りを果たしました。

しかし日本経済は、1990年代前半のバブル崩壊によって一気に落ち込みます。製造業そのものが下火となり、設備投資は抑制傾向になりました。これまで以上に費用対効果が叫ばれ、産業用ロボットの効果を最大限発揮させるための運用方法が検討されるようになった時代でもあります。

その結果、産業用ロボットは人に向かない作業に特化することになります。特定の用途に特化した産業用ロボットは再び製造業を牽引し、日本は技術大国として国際的なロボット産業を支えていくことになるのです。

情報機器のニーズとともに復活した産業用ロボット

2000年代になるとパソコンや携帯電話などの情報機器の需要が急増し、製造業は再び復活します。リーマンショックによる打撃はありつつも、中国を中心としたアジア諸国の発展を追い風に、日本で作られた産業用ロボットは世界規模で導入が進んでいます。

日本の未来を支える、産業用ロボット

現代日本は「少子高齢化」の問題に直面しており、2013年には7,901万人だった15歳〜64歳までの生産年齢人口は2060年に4,418万人までに落ち込むともいわれています。労働人口の減少が止まらない日本において、産業用ロボットはますます期待を集めることになるでしょう。

参考:第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
参考記事:生活や仕事への影響は?ロボットが未来で果たす役割とは

産業用ロボットは時代とともに発展を続けてきた

製造業に欠かせない存在となった産業用ロボットは、さらなる発展や技術革新を続けています。その背景には、時代の変遷とともに変わっていくニーズに応えようとした技術者、工場の努力がありました。

少子高齢化が進んでいく日本では、産業用ロボットがこれからの製造業発展のカギを握っています。自社でより高いパフォーマンスを発揮するために、産業用ロボットの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

参考記事:上手に活用して競争優位を確立する。産業用ロボットの最新技術

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