【資格取得が必須】産業用ロボットの主なティーチング方法4選

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製造業界が抱える悩みの一つ「人材不足」。国内の人口は年々減少しており、若手の労働人口を呼び込むことが難しくなってきています。総務省が発表した「人口推計」では、2015年における14歳以下の人口は、1,595万人でした。2021年の推計値は1,400万人まで減少し、2056年には1,000万人を割ると言われています。

このまま人口減少が進むと、現在活躍している熟練工たちがキャリアを終える頃には、次世代を担う働き手が不足します。人材不足の課題を解決する手段として注目を浴びているのが、産業用ロボットです。人の作業をロボットへ移行して、ロボット1台で複数人の作業をこなし、生産性が低下しない環境を構築が可能になります。

しかし産業用ロボットを動かすためには、ロボットがどのように動くかプログラミングを施す「ティーチング」と呼ばれる作業が必須です。ティーチングにかかるコストや人件費は、産業用ロボットを導入する上で見逃せません。今回は、産業用ロボットを稼働させるうえで欠かせない「ティーチング」にスポットを当てて解説します。

参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」

それぞれ特徴が異なる4つのティーチング方法

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産業用ロボットのティーチング方法には、大きく分けて4つのティーチング方法があります。それぞれのティーチング方法にどのような特徴があるのかご紹介します。

オフラインティーチング

「オフラインティーチング」とは、パソコン上でプログラムを作成し、そのデータをロボットに転送するティーチングを指します。産業用ロボットの機体を使わないため生産ラインをストップさせる必要がなく、プログラミング中の経済的損失を防げます。しかしプログラムを読み込んだ状態では、ロボットが想定通りに動作するかわからないため、注意が必要です。オフラインティーチングには以下の4種類があります。

テキスト型

テキストエディタでロボットのプログラムを直接書いていく方法です。複雑な動きをするロボットではなく、搬送などの簡単な動きをするロボットのティーチングに使われます。

シミュレータ型

ロボット言語のアップロード、ダウンロードなどのデータ上のやり取りができ、座標の逆変換や3D表示と作成機能が揃ったティーチング方法です。ロボット言語のコンパイラ(言語の変換)を実行することで、各社のロボットに対応することが可能です。

エミュレータ型

ロボットメーカーの多くがこのエミュレータ型を採用しています。ロボット言語を直接実行するため、プログラム精度が高いという利点があります。ティーチングマンにとってオフラインティーチングが容易であるという点からも採用度の高さが頷けます。

自動ティーチングシステム

コンピュータ上の2Dや3Dのデータ「CADデータ」から、加工プログラムを自動的に作成するシステムです。自動プログラミングは技術的に難易度が高く、実際の現場ではあまり採用されていません。

オンラインティーチング(ティーチング・プレイバック)

一般的なティーチング操作では、ティーチングペンダントと呼ばれるリモコンで操作をします。オンラインティーチングでは、ロボットを実際に動かしながら、各接合部の稼働具合を記録し、記録した動作を再生して確認します。この方法を「プレイバック方式」と呼びます。

ティーチングの作業中は生産ラインを止めなければならず、ティーチング作業に時間を費やすほど損失が大きくなってしまいます。そのため、頻繁にティーチングが発生しないよう、ロボットを導入する段階で入念なティーチングを行っておく必要があります。

ダイレクトティーチング

ダイレクトティーチングは、「直接教示法」とも呼ばれています。作業者がロボットを直接動かして、ロボットに動作を教える方法です。具体的には、人がロボットの先端を手で動かし、その操作経緯をリモコンやコントローラーに記憶させています。直感的な教示方法として知名度が高いです。人と一緒に働く双腕ロボットは、ダイレクトティーチングを取り入れているタイプがあります。

AIによるティーチングレス

近年、AIを活用してティーチングを必要としないロボットの開発が進んでいます。AIには自己学習機能が備わっており、オフラインティーチングでプログラミングした作業を、ダイレクトティーチングで修正しながら、更に繰り返し稼働することでその精度を向上させていきます。最初はエラーが多いかもしれませんが、次第にミスのない高品質の作業を高速で行えるようになります。産業用ロボットを長期間運用する場合、ティーチングにかかる人件費を考慮すると、AIを導入したほうがコスト削減になるケースがあります。

ロボットのティーチングには「特別教育」の資格が必要

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産業用ロボットは、人手不足の解消や高品質な製品の高速製造、重労働作業からの解放など、多くの利益をもたらしてくれます。一方で、機械の動作は人との接触事故を起こすという思いがけないトラブルの原因となる危険性もあります。

また、定格出力が80Wを超える産業用ロボットを使用する場合、柵や囲いで危険防止に取り組むことが規定によって定められています。規制緩和により、定格出力が80W以下のロボットなら人との協働が認可されましたが、常に安全への配慮を怠ってはいけません。

厚生労働省では、産業用ロボットの操作にかかわる労働者、ティーチングなどの教示作業を行う労働者に対して、「産業用ロボットへの教示当作業者」という特別な教育を修了する必要があると定めています。産業用ロボットへの理解を深めるため、安全に配慮して作業を行うために必ず受講させる必要があります。必要な科目、受講時間も厚生労働大臣によって正式に定められており、受講内容に不備がある場合は資格は認められません。

参考:労働安全衛生規則第150条の4
参考:平成25年12月24日付基発1224第2号通達
関連記事:常に安全への配慮を。産業用ロボットの業務に特別教育が必要な理由

ティーチングなどの運用を考慮して産業用ロボットを選ぶ

産業用ロボットは、生産効率を飛躍的に高められると期待されています。しかしロボットを扱うことで、事故の発生など労働者が抱える新たなリスクもあり、管理監督者に対する責任も大きなものとなります。経営者は、「どれだけ高い効果が出せるか」というメリットだけではなく、リスクについても十分に把握しておかなければなりません。

産業用ロボットには、ティーチングやメンテナンスなど、まだまだ人の手が必要不可欠です。ロボット導入を検討する際は、日々の運用も考慮した上で、自社に見合うロボットを選択しましょう。

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