「ロボット新戦略」を徹底解説。ロボット大国・日本のこれから

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日本では、以前より少子高齢化に伴う労働人口の減少が問題視されています。その解決策として、製造業を中心に産業用ロボットの活用が進んできました。

もともと、日本は2012年時点で出荷額が約3400億円、世界シェアの約半数を占めるなど、まさにロボット大国と言っても過言ではありませんでした。その背景には、主な輸出品である自動車産業において、産業用ロボットの本格導入を目指していたことが深く関係していたとされています。

その一方で、一部の先進国では急速に産業用ロボットの開発が進んでおり、中国では2013年に年間ロボット導入台数が日本を逆転、世界一となっています。そこで経済産業省は、「ロボット新戦略」を公表しました。今回は、この「ロボット新戦略」について、解説します。

世界に対抗すべく動きはじめた「ロボット新戦略」

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先述の通り、日本はこれまでロボット生産において他国を圧倒していましたが、近年その状況は変わりつつあります。

たとえば、中国は「2020年までに産業用ロボットの国内売り上げを10倍(3兆元)にする」という目標を達成するために、「智能製造装置産業発展計画」を2012年にスタートさせました。

ドイツでは、国内の主要企業が協議会を形成し、ロボットとITの融合を目指す取り組みを進めているなど、世界中でロボット活用に向けた活動が始まっています。

このような世界的情勢に対し、平成27年(2015年)1月、より進んだロボットの活用や技術革新を目指して「ロボット革命実現会議」が実施されました。この会議で議論された、具体的なビジョンや戦略、アクションプランをまとめたものが「ロボット新戦略」です。

「ロボット革命」の定義と戦略

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日本は、さらに発展したロボット大国を目指すために、ロボット新戦略に基づいた、「ロボット革命」の実現に向けて取り組んでいます。この「ロボット革命」とは、主に以下の3点によって定義されています。

  1. センサー、AIなどの技術進歩により、従来はロボットと位置づけられてこなかったモノまでもロボット化し(例えば、自動車、家電、携帯電話や住居までもがロボットの一つになる。)
  2. 製造現場から日常生活の様々な場面でロボットが活用されることにより、
  3. 社会課題の解決やものづくり・サービスの国際競争力の強化を通じて、新たな付加価値を生み出し利便性と富をもたらす社会を実現する

引用:日本経済再生本部「ロボット新戦略」

従来の日本では単純作業を効率化する産業用ロボットの開発が行われていましたが、「このままではロボット産業において取り残されてしまうのではないか」、「明確なビジネスモデルを持たないままでは、ものづくりでは勝ってもビジネスで負けてしまうのではないか」という懸念が強まっています。

ロボット革命を実現するための戦略について、政府はどのような施策を考えているのでしょうか。報告書では、以下の3つが戦略の柱とされています。

  1. 世界のロボットイノベーション拠点-ロボット総出力の抜本的強化
    産学官の連携やユーザーとメーカーがマッチングする機会を増やし、イノベーションを誘発させていく体制の構築や、人材育成、次世代技術開発、国際展開を見据えた規格化・標準化を推進する。
  2. 世界一のロボット利活用社会-ショーケース(ロボットがある日常の実現)
    ものづくり、サービス、介護・医療、インフラ・災害対応・建設、農業など幅広い分野においてロボットの開発、導入を急ぐ。日本のあらゆるケースでロボットがある日常を実現させる。
  3. 世界をリードするロボット新時代への戦略
    ロボットが相互に接続、データを自律的に蓄積・活用することを前提としたビジネスを推進するためのルールや国際基準の獲得を進める。同時に、セキュリティや安全に関するルール・標準化も定める。

引用:日本経済再生本部「ロボット新戦略」

産業用ロボット分野における今後の課題のひとつは、「海外に販路を拡大すること」です。今まさにロボット産業で日本を追い抜こうとしている欧米諸国や中国、韓国などに対抗すべく、日本も産業用ロボットの世界展開が避けられません。

そのためにも、高い品質や安全性の保証はもちろん、海外でも問題なく活用できるよう、通信やインターフェースを中心とする互換性の確保が必須となっているのです。

製造、サービス、介護……あらゆる分野で求められるロボット

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日本のロボット産業は、「国内のあらゆる分野において産業用ロボットの導入を急ぐこと」も重要だとされています。

産業用ロボットに期待されているのは、今後大きく減少するであろう、労働力を補う点です。実際にロボット新戦略でも、2020年に目指すべき以下のような目標を掲げています。

  • 製造分野で使用されるロボットの市場規模を2倍に拡大(6000億円から1.2兆円)させるとともに、製造業の労働生産性の伸び率を年間2%を上回るよう向上させる
  • 組み立てプロセスについて、ロボット化率を大企業で25%、中小企業で現状の大企業並みである10%を目標とする

現状、日本で作られる産業用ロボットは、国内よりも海外需要のほうが多く、ロボット産業の拡大のためには、国内でのロボットの需要を高めつつ、いかに導入させるかが大きな鍵となります。

では、ロボット活用の推進について、「ロボット新戦略」の報告書で取り上げられている分野を見てみましょう。

1.ものづくり分野

日本のものづくり分野では、自動車産業における溶接や塗装工程、電気・電子産業における部品装填工程ではロボットが積極的に導入されてきました。しかし、中小企業では未だピッキングや整列、放送や入出荷といった作業で人手による作業が中心です。中堅・中小企業でも問題なく活用できるよう、安価で簡単に活用できるロボットの開発や、技能者の育成が欠かせません。

また、これまで導入が遅れていた三品産業(食品、化粧品、医薬品)でも人とロボットが協調して働けるような、産業用ロボットの開発と導入が進められています。

関連記事:産業用ロボットは食品業界で活躍できる?普及への課題と導入事例
関連記事:化粧品市場にも進出する産業用ロボット。業界の課題と普及への道

2.サービス分野

以前よりロボットを活用していたものづくり分野とは異なり、日本のサービス産業は未だ人の手に頼る部分が多くあります。そんな背景もあり、ロボットによる自動化の余地は非常に大きいという見方もされています。

小売業や飲食業では、単純作業が存在します。人手を割いているこれらの作業をロボットに置き換え、より付加価値の高い接客サービスが提供できるようにするのも、ひとつの方向性として考えられています。

3.介護・医療分野

少子高齢化社会により、介護・医療の現場では将来的に高いニーズが発生することが予想されています。しかし、現在は人手が不足しているだけでなく、身体的な負担が大きいことから退職を余儀なくされる介護職員も後を絶ちません。

ロボットによって介護の業務をすべて代替させるのではなく、ロボット介護機器の活用によって「人の手により提供される」という基本概念を維持しながら、業務の効率化や省人力化を目指す動きが進められています。

日常的にロボットが活用される「ロボット大国」を目指して

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ロボット革命の目標は、単純に「それまで人が行っていた作業をそのままロボットに代替させる」といったものではありません。優れた働きをするロボットを開発すれば解決するのではなく、「人とお互いに足りない部分を補い合ったうえで、人が高付加価値へシフトできるようなパートナーとしてのロボット」が求められています。

「ロボット新戦略」をもとに、日本はより「ロボット大国」として大きく成長することでしょう。

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