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ロボットシステムインテグレーション導入プロセス標準・通称「RIPS」とは?

ロボットシステムインテグレーション導入プロセス標準・通称「RIPS」とは?

今回は新たなロボットシステムの導入プロセス標準「RIPS」の定義やメリット、そして発注者の「RIPS」への向き合い方について解説します。産業用ロボットの導入は、最近まで構築プロセスを管理する標準的な手法が存在していませんでした。これが一因でSIerと発注者との間で起こるトラブルが非常に問題視されていたのです。

産業用ロボットの導入は、最近まで構築プロセスを管理する標準的な手法が存在していませんでした。これが一因でロボットSIerと発注者との間で起こるトラブルが非常に問題視されていたのです。

そんな中、新たなロボットシステムの導入プロセス標準・通称「RIPS」が2017年に誕生しました。今回は「RIPS」の定義やメリット、そして発注者の「RIPS」への向き合い方について解説します。

これまでの産業用ロボット導入プロセスと課題

産業用ロボットを導入する際にロボットSIerが行う業務内容は以下のようなフローに大別できます。

  1. 営業活動(引合)・見積もり・発注者との受注契約
  2. システム構想・設計開発・シミュレーション
  3. 部品製作・システム組付
  4. ソフトウェア導入・ロボットティーチング
  5. システム動作テスト
  6. 現地据付・現地動作および品質確認
  7. 客先引渡・検収・集金

以前は産業用ロボットシステム導入プロセスを”スタンダードに則って管理する”という概念は存在しませんでした。特に序盤の引合段階でロボットSIerとエンドユーザーの合意形成が曖昧なままプロジェクトを進めるケースが常態化していたのです。

日本のSIerの多くは閉鎖的な業界で”忖度”のある仕様打合せや受注開発が多いことが問題視されており、近年増加傾向にある国内新規産業の企業や海外企業に対しては不適切な体質とされてきました。

システム導入のプロセス管理を怠ると、ロボットSIerと発注者の契約時のすり合わせが不十分で、その後もプロジェクトが不透明に進捗することになります。そして結果どうなるかというと、「着地に失敗して怪我をする」可能性が格段に上がります。

着地というのは、”発注者が望んだ通りのシステムの完成”を指します。これに失敗すると度重なる仕様変更や工程の追加による追加費用請求問題が発生し、”SIer企業と発注者側の企業間のトラブル”という怪我に繋がります。

SIerが構築したロボットシステムを発注者側の企業の生産工場に復元・設置したあと、動作および品質確認を行うときに、当初の想定と違った機能が必要だと判明するケースは決して少なくありません。

ロボットシステムインテグレーション導入プロセス標準「RIPS」とは?

「RIPS」とは正式名称を「Robotsystem Integration Process Standard(ロボットシステムインテグレーションプロセス標準)」といい、産業用ロボットシステム構築導入プロセスの標準となるガイドラインのことです。ロボットSIerと発注者間で両者納得のいく仕事を進めるための”新常識”として、2017年に経済産業省と日本ロボット工業会によって検討・提案されました。

「RIPS」によって何が変わる?

「RIPS」ではもともと問題視されてきたプロセス管理の穴を埋めるべく、システム構築における各作業の工程、作業内容(成果物)を明確に定義しています。SIerはその定義をもとに、発注者から明確な目標仕様をヒヤリングし、その目標に向けて無駄なく仕事を完成させていくことを目指すのです。

つまり、「RIPS」によってロボットSIer業界の体質が開放的で透明なものへ変わっていくといえます。プロジェクトにおいてSIerと発注者の両者が目的仕様に向かって同じ方向を見続けられることで、トラブルの原因となる余計な手戻りや追加作業を減らすことができるようになるのです。

「RIPS」の本質的な狙いとは?

「RIPS」が打ち出された2017年には、ロボットSIerに求められるスキルの標準も策定されており、これを機に産業用ロボット界へのテコ入れが行われています。

そもそも産業用ロボットというのは、生産規模拡大・品質安定化・コスト削減など製造業に甚大な恩恵をもたらす分野です。目下はSIerが仕事の完成をスムーズにするための動きとして、ゆくゆくは日本の製造業のさらなる発展に繋がる準備として、「RIPS」は大きな狙いが込められた国策の一環といえます。

「RIPS」を前提とした産業用ロボット導入の前に準備すべきこと

「RIPS」に則ったシステム構築ではロボットSIerの一連の仕事だけでなく、発注者側の”情報伝達”という形での参画も非常に重要になってきます。とりわけ提案依頼書(RFP)をいかに正確に記載できるかにかかっています。SIerにとっては発注者の提示する目的、要望や予算・スケジュールが、その後の作業のすべてを左右するからです。

SIer側にもコンサルティングによって発注者の課題を掘り起こして理解する努力義務はありますが、「RIPS」の恩恵に預かるためには発注者側にも準備が必要です。以降、2つの要因に分けて解説していきます。

1.課題の明確化

まずは発注者自身が抱えている課題をリストアップします。そこで挙がったものを最終的にロボットで解決することが目的なので、徹底的に明確に洗い出さなければなりません。例として製造業が一般的に抱えやすい課題を以下に列挙します。

  • 人手不足の解消
  • 生産効率・生産量の増加
  • 稼働率の向上(24時間化)
  • ヒューマンエラー防止
  • 品質の安定化
  • 単純作業・危険作業の代替
  • コスト削減

課題が明確であればあるほど、ロボットSIerからの提案もより具体的になり、ニーズに合致したものになります。

2.情報収集

課題の洗い出しの次は情報収集になります。産業用ロボット導入実績がなく、何から手をつけてよいかわからないという中小企業にはとくに必要な過程です。収集した情報は、現代のロボット技術や他社が導入するロボットシステムなど、自社が導入するビジョンを明確にしてくれます。

まず足を運ぶべきはロボットが活躍する各業界の展示会やロボットの専門展です。ロボットベンダーの出展や説明会で知識を得るだけではなく、案件の種としてベンダーやロボットSIerと顔合わせができるなどのメリットがあります。具体的には「国際ロボット展」や「ジャパンロボットウィーク」、「ロボテックス」に「スマート工場 EXPO」などさまざまです。

また、近年では産学官連携で産業用ロボット業界を支援する動きが盛んです。各自治体でロボットのショールームやロボット導入支援講座が相次いで開設されています。中部経済産業局が2017年に制作した「産業用ロボット導入ガイドライン」も非常に有用です。

参考:経済産業省 中部経済産業局「産業用ロボット導入ガイドライン」

「RIPS」でより確実でスムーズなシステム導入を

「RIPS」はこれまで確立されていなかった産業用ロボットシステム構築のプロセスに、国を挙げて設けられた新たなスタンダードです。この画期的な概念はロボットSIerと産業用ロボットを導入する企業との緻密なコミュニケーションと各工程作業の透明性を確保することが期待されています。

「RIPS」を活かせるかどうかはSIerのスキルだけでなく、発注者の理解と正確な情報伝達も重要なポイントとなります。自社の課題に悩む前段階として、その課題の明確化と産業用ロボット導入に役立つ情報収集を行うことがおすすめです。

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