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市場規模は2035年までに5倍に。産業用ロボット業界の成長見込み

市場規模は2035年までに5倍に。産業用ロボット業界の成長見込み

現在、国内外で注目を浴びている産業用ロボット。産業用ロボットによる作業自動化の波は、日本だけでなく世界でも広がっています。産業用ロボットの世界販売台数は、2011年から2016年にかけて毎年平均14%ずつ増加しているとの報告も。今回の記事では、国内や海外の産業用ロボット業界の動向やこれからの成長性、期待が寄せられているロボットの種類などを解説します。

現在、国内外で注目を浴びている産業用ロボット。産業用ロボットによる作業自動化の波は、日本だけでなく世界でも広がっています。ドイツに拠点を置く国際ロボット連盟(IFR)が発表した「World Robotics: Industrial Robots 2017」というレポートによると、産業用ロボットの世界販売台数は、2011年から2016年にかけて毎年平均14%ずつ増加していると記されています。

今回の記事では、国内や海外の産業用ロボット業界の動向やこれからの成長性、期待が寄せられているロボットの種類などを解説します。

【世界と日本視点で見る】産業用ロボット市場の現状

参考:Global industrial robot sales doubled over the past five years – IFR

産業用ロボットの年間販売台数は、日本だけでなく世界的に増加傾向です。アジアやヨーロッパでは、高騰する人件費に代わる生産力として、ロボットに期待が寄せられています。

成長を続けるロボット市場の動向を、まずは世界と日本にわけてご紹介します。

【世界のロボット市場】アジアが顕著な成長を見せる

参考:Global industrial robot sales doubled over the past five years

近年、産業用ロボットの生産国として成長が著しいのが中国と韓国です。国際ロボット連盟(IFR)が発表した「2016年度ロボット販売台数世界トップ15カ国」によると、販売台数1位は、中国(87,000台)で、次いで韓国(41,400台)、僅差で日本が3位(38,600台)という結果が出ています。

中国の急成長を支えたのは、国内メーカーの育成と保護を進めた中国政府です。中国メーカーは政府の後押しを受けて生産力をつけ、世界販売台数の1/3にのぼる87,000台を売り上げるにいたりました。

また、韓国政府もスマートホンに使われる半導体やディスプレイなどの電子機器需要の高まりに狙いをつけ、大規模な投資を行いました。その結果、ロボットの年間売上高が大幅に増加し、前年の8%増となる41,400台が販売しました。

【日本のロボット市場】自動車や電気機械以外の産業での活用が広まる

2016年の販売台数は3位だったものの、日本は国内に世界的に有名なロボット企業を抱えており、現在でも産業用ロボット大国として最先端の研究や開発が行われています。

日本の産業用ロボット市場では、活用領域の拡大が進んでいます。活用領域の割合を示しているのが以下の表です。

業種 2009年 2015年 変化率
自動車 32% 32%
電気機械 37% 29% -8%
機械 3% 9% +6%
金属製品 5% 7% +2%
測量品 4% 4%
プラスチック 7% 3% -4%
化学工業 1% 1%
その他製造業 11% 15% +4%

参考:1.産業用ロボット市場の動向(3) – 三井住友銀行

これまでの産業用ロボットは、自動車や電気機械といった大型機械の製造工場で主に活用されてきました。初期コストの高さや、ロボットに付随する周辺システムの構築のために広い工場が必要など、資金力のある企業でしか産業用ロボットの導入が難しかったからです。

しかし、現在は小型化や低価格化が進んだことや、人と一緒に作業できる「協働ロボット」が普及したことで、中小企業でも産業用ロボットを導入できるようになりました。広い工場を持たなくても導入が可能になったため、これまでロボットによる自動化が進んでいなかった領域への普及が進んだのです。

これからの産業用ロボット市場

参考:平成22年ロボット産業将来市場調査(経済産業省、NEDO)

経済産業省と国立開発研究機構のNEDOは、サービスロボットを含む国内のロボット市場規模が2035年には5倍以上成長するとの見解を示しています。

少ない人材でこれまで以上の生産性を生むために、産業用ロボットに注目が集まっているのです。これから人口減少と高齢化のスピードはますます上昇していくと予想されており、産業用ロボットへの期待が市場規模拡大につながっていると言えます。

今後の産業用ロボットは、具体的にどのような場面での活躍が期待されているのでしょうか。次に、これから特に注目したい業界の動向をご紹介します。

IoTやAIなど情報テクノロジーの活用

産業用ロボットにも、IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)が搭載されはじめており、工場の自動化や効率化を加速させる機能として期待が寄せられています。

ロボットや周辺システムをインターネットに接続することで、各システムの稼働状況をデータとして収集できるため、注力すべき製造ラインの判断材料になったり、自動化システムの不具合をすぐに発見できたりします。

AIは、産業用ロボットの動作を設定するために必要なティーチングの負担を軽減できる可能性があるとして、現在研究が進められている技術です。従来、ロボットの動作を設定するためには、専門知識のある人が取り扱い製品や自動化システムにあわせて適宜プログラミングしなければなりませんでした。しかしAIを活用すれば、ロボットがセンサーを使って製品を認識し、自ら考えながら動作できるようになるのです。

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広い業種での活用にあたり、柔軟に対応できるSIerの重要性が高まる

これからの産業用ロボットは、自動車業界や電子デバイス業界以外にも、食品や医薬品といった他業界にも普及が進んでいくと考えられています。しかし、こうした企業には産業用ロボットの活用ノウハウがありません。

そこで産業用ロボットの専門家であるSIerの重要性が高まっています。産業用ロボットに求められるニーズは業界ごとに異なり、ピッキングやパレタイズといった用途だけでなく、工場の規模もさまざまです。こうした多様な条件のなか、柔軟に製造ラインを構築、運用できるSIerが非常に重要だといえます。

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世界的に注目が集まっている産業用ロボット

これまでは、ロボット市場の動向についてご説明してきました。最後に、これからの産業用ロボット業界で、特に注目されている2種類のロボットをご紹介します。

【注目度No.1】人と一緒に作業ができるロボット。協働ロボット

従来の産業用ロボットは、万が一にでも人と接触して怪我をすることがないように、柵や囲いをして作業員と隔離する必要がありました。しかし、出力が80W未満のロボットなら、人のいるスペースで協働することが法律で認められました。そのため国内外の大手メーカーが、人と一緒に作業できる「協働ロボット」の開発を進め、市場規模も拡大しています。

協働ロボットを導入するメリットは、人の代わりとして導入できるため、ロボット専用の製造ラインの構築が不要になり、導入コストを抑えられることです。また、人の腕を模した「双腕ロボット」も開発が進んでおり、人が行っていた作業も高速かつ正確に実行できるようになってきています。

関連記事:協働ロボットのメリットとは?流行の背景や定義などの全知識

需要が急騰する物流業界の救世主。自動搬送ロボット(AGV)

インターネットショッピングの需要拡大により、大型倉庫を抱える企業では連日の搬送作業に人手を要しています。重たい荷物や広い倉庫に対応する体力が必要なことから、物流業界はこれまでも人手不足を課題としてきました。

現在は、自立式搬送ロボットを導入し、ロボットが人に代わって商品や部品を搬送させる企業も増えています。倉庫内で人が移動する必要がなくなり、作業員一人あたりの効率アップが可能です。今後、人口減少と反比例してインターネットショッピングの需要は増え続けていくと予想されるため、搬送ロボットのさらなる活躍が期待されています。

関連記事:物流工場を自動化する搬送ロボットとは。タイプ別の特徴や導入事例

市場規模拡大にも課題あり。これからの業界動向にも注目

人口減少や超高齢社会など、これからの日本社会を見据えると、働き手の確保は難しくなっていきます。また世界的にも人件費が高騰し、海外に製造工場を置いていた企業も効率化は必要になるでしょう。

こうした背景から、産業用ロボットの需要は今後ますます増加していくと考えられていますが、SIerの不足や現場のロボットに対する理解不足といった課題も残っています。これから産業用ロボットをより普及するためには、こうした課題の解決が必要です。

現在、メーカーと行政は導入の補助金制度や講習会なども積極的に実施しているため、現場の産業用ロボット理解も徐々に進んでいくと考えられます。これからの産業用ロボット市場動向にも目が離せません。

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