協働ロボットのメリットとは?流行の背景や定義などの全知識

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従業員の高齢化や深刻な人手不足など、数多くの課題を抱えている製造業界。産業用ロボットはこうした課題に対する一つの解決策として、注目を集めています。生産技術の向上に伴う低価格化や補助金制度の整備が進み、産業用ロボットは中小企業にも普及しはじめています。


しかし一般的な産業用ロボットは、事故を防ぐための安全柵を設置したり、ロボットが活躍するための生産ラインを構築する必要があるなど、中小企業が手軽に取りいれるのは困難でした。


こうした産業用ロボットの課題を解決するために、新しく生まれたのが「協働ロボット」です。今回は、協働ロボットと従来の産業用ロボットとの違いや、協働ロボットならではのメリットなどをご紹介します。

産業用ロボットにも課題がある?協働ロボット流行の背景

日本の製造業が抱える大きな課題の一つが、労働人口の不足です。2014年に総務省が発表した「人口推計」では、14歳以下の人口が1,621万人という実績が算出されています。2025年の推計値は1,324万人、2045年には1,012万人と、若者の数はより顕著に減少していくと推測されているのです。


中小企業にとって、この数値は企業の存続に大きな影響を及ぼします。次世代の担い手が確保できなければ、企業は成長を目指すのではなく現状維持で手一杯となってしまうからです。


そこで、「人の代わりになって作業を行う」協働ロボットが開発されました。これまでの産業用ロボットは、安全のために大きな柵でロボットを囲み、人とロボットの作業範囲を完全に分ける必要がありました。しかし、法律の規制緩和が行われ、一定の条件を満たしたロボットであれば、安全柵を設置しなくても人との協働作業が可能になりました。


この規制緩和により、人との協働を目的とするロボットの導入が進められ、中小企業においても価格のハードルが下がったことで導入する企業が増加することになりました。


参考:国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口(平成24年1月推計)

ほかの産業用ロボットとの違いは?協働ロボットの定義

産業用ロボットを安全に使用するために、法律「労働安全衛生規則第150条の4」では以下のように規定されていました。

「産業用ロボット(定格出力が80Wを超えるもの)」に接触することにより危険が生ずるおそれがあるときは、さく又は囲い等を設けること

引用:「労働安全衛生規則第150条の4


つまり、人と産業用ロボットが同じ場所で作業を行う場合、柵や囲い等を設けて分離する必要がありました。この法律が「平成25年12月24日付基発1224第2号通達」により、以下のように改訂されました。


(1)労働安全衛生法第28条の2による危険性等の調査に基づく措置を実施し、産業用ロボットに接触することにより労働者に危険の生ずるおそれが無くなったと評価できるときは、本条の「労働者に危険が生ずるおそれのあるとき」に該当しない
(2)「さく又は囲いを設ける等」の「等」には、次の措置が含まれること
・・・・・産業用ロボットの規格(ISO10218-1:2011及びISO10218-2:2011)によりそれぞれ設計、製造および設置された産業用ロボットを、その使用条件に基づき適切に使用すること(一部省略)

引用:「平成25年12月24日付基発1224第2号通達


要約すると、「産業用ロボットとの接触により危険がない」といった条件によっては、産業用ロボットと人との協働作業が認められることになりました。この基準を満たしたロボットが「協働ロボット」とされています。

協働ロボットを導入するメリット

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では、協働ロボットにはどんなメリットがあるのでしょうか。協働ロボットの導入によって得られるメリットは数多くありますが、その中から代表的なものをご紹介します。

高速かつ高精度な作業で「生産性向上」

ロボットは、人と違って労働効率が低下することがなく、一定かつ高速水準の作業を持続させることが可能です。これによって、生産量の向上が見込めます。また、作業員の熟練度による品質のムラがなくなり、高品質をキープすることが可能です。効率の良い動作でロスが少ない点は、協働ロボットの大きなメリットといえます。

どんな環境でも活躍できる「労働力の確保」

かつて工場は、「汚い、危険、きつい」という3Kの職場として、就職先として人気がありませんでした。高い技術力が要求され、熟練作業員が労働集約型で働かなければならず、3Kというイメージが広まってしまったのです。


しかし、近年はロボットの技術が進歩し、熟練作業員の技術をロボットにインストールできるようになりました。ロボットは教育期間を必要としないため、高い技術と生産性を持った労働力をすぐに現場に導入できるのです。


また、作業員が担当するのはロボットの補助になったため、労働環境が改善され、これまでの3Kというイメージは払拭されつつあります。

長期的な視点での「コスト削減」

人が労働する時間は法律で定められていますが、ロボットの労働時間は定められていません。協働ロボットは、夜間を含めて長時間稼働できるため、人件費を抑えつつ高い生産性を確保できます。


省人化によるコスト削減の実現は、どの業界でも常に試行錯誤されてきました。協働ロボットを導入するコストは発生しますが、人件費や人材募集のコストカットが永続的に期待できるため、長期的には導入コストを上回る効果を発揮してくれます。

幅広い用途に対応できる協働ロボット

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それでは実際に協働ロボットを導入したことで「導入前にどういった課題があったのか」「ロボットでどの作業領域を改善し、どんな効果が得られたのか」について、製造分野ごとに詳しく紹介していきます。

用途1.ハンドリング

あるたこ焼きの生産ラインでは、作業員が手作業で1個ずつタコを投入していましたが、作業員毎の精度やオペレーティングミスが課題となっていました。この現場に協働作業ができるパラレルリンクロボットを導入し、熟練技能の一定化を実現させました。これにより品質を安定化させました。熟練技術の均一化は、製造現場における課題でもあります。その課題を解消できれば、人を選ばない現場を育てることにつながります。


事例引用:
ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2017

用途2.組み立て

粉末化粧品を扱う工場では、作業員が仕上げ(検査や組立などを含む)作業を行っていました。この仕上げと組立作業は、製品によって材料やサイズが異なり、ロボットを導入しても部品交換や組合せ変更などの人手による作業が必要でした。この課題に対し、双腕ロボットの導入と周辺設備の自動化によって人との協働環境を構築しました。異なる工程や作業への切り替えをスムーズに行えるようになり、生産性を1.1倍向上させたのです。


事例引用:
ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2017

用途3.検査

協働ロボットの活躍の場は、ハンドリングや組立だけに留まりません。ある検査の製造現場では、製品の外観に生じる欠陥の発見は作業員の目視検査で行われていました。常に高い集中力が求められ、高い熟練度をもつ作業員でさえも、人為ミスが発生する懸念がありました。


そこで、この工程に画像センサーを備えたロボットを導入し、外観検査システムを自動化。このロボットは検査員の判断を学習する機能を備えており、製品の変更にも容易に対応できるようになりました。その結果、労働生産性は10倍も上昇したと言います。


事例引用:
ロボット導入実証事業事例紹介ハンドブック2018

ロボット導入は企業にとってターニングポイント

これまでの産業用ロボットは、ロボットのために大掛かりな生産ラインを構築する必要がありました。しかし、協働ロボットは、必要な工程にピンポイントで導入できるため、コスト面でもロボット導入が比較的簡単になったと言えます。


とはいえ、協働ロボットの導入は企業にとってターニングポイントになります。コストに見合った効果を出せるのか、慎重な判断を要します。現状の課題を熟慮し、どのような機能を持つロボットであればそれを改善できるか、その他のロボットと比較して自社に見合うベストなロボットを導入しましょう。

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