IoTの基礎知識と製造業での活用メリット・課題を徹底解説

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IoTと製造業

IoTとは、さまざまな「モノ」をインターネットに接続し、相互に制御する仕組みです。「Internet of Things」の略称で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。あらゆるモノがつながることで、それぞれのモノから個別の情報を取得でき、収集された膨大な情報は多くの業界で革新的なサービス・商品を生み出しています。

IT専門調査会社IDC Japan 株式会社の調査によれば、国内IoTの市場規模は右肩上がりに成長し、2023年には11兆7915円に達すると予想されるほどです。

参照:『国内IoT市場 ユースケース(用途)別/産業分野別予測を発表』IDC Japan 株式会社

今回はIoTの基礎知識から、期待が高まっている製造業でのIoT推進背景、活用メリット、課題までを徹底解説します。

【目次】
  1. 製造業のIoT化は企業命題? 注目背景を紹介
  2. 「つながる」IoTの基本機能
  3. IoTを支える技術キーワード
  4. IoTを活用した製造業のメリットとは
  5. 製造業のIoT化を妨げる課題

製造業のIoT化は企業命題? 注目背景を紹介

製造業のIoT化

冒頭でIoTの市場規模を紹介しましたが、同調査によれば、国内主要産業のうちIoTへの支出額が突出しているのが製造業です。製造業で活用されるIoTはIndustrial Internet of Things (IIoT)とも呼ばれ、生産効率・安全性の向上・サプライチェーンの最適化が期待されています。

では、製造業でIoT活用に注目が集まった背景には、どのような要因があるのでしょうか。

これからの製造業の理想形「インダストリー4.0」と「Connected Industries」におけるIoTへの期待を見ていきましょう。

インダストリー4.0

インダストリー4.0とは、ドイツ政府が推進する産業競争力を維持するために掲げたビジョンの総称で「第4次産業革命」とも呼ばれています。工場における生産工程のデジタル化によって現場を可視化し、意思決定の最適化、生産効率を向上させた多品種少量生産を実現するための概念です。

インダストリー4.0の中核となる構想が「スマートファクトリー」と「マスカスタマイゼーション」、「ダイナミックセル生産」になります。

ポイントはデジタル技術を活用した機械設備や管理システム同士の「つながり」にあり、その要となる技術がIoTです。

スマートファクトリーで工場全体の効率化

スマートファクトリーとは、工場内の機械をインターネットに接続して、「工場自体が効率化を考える」というコンセプトをもとに実用化が進められている、インダストリー4.0を体現する工場です。

モノをインターネットにつなげるIoTによって、工場内のあらゆる機器や設備、作業員の作業工程といったデータをリアルタイムで収集・分析し、生産拠点や企業間の相互反応性を高め生産性を向上させます。

スマートファクトリーは部分的な効率化だけでなく、製造工程ごとに異なる専用システムをプラットフォーム上でつなぎ、製品設計から設備設計、製造までをシームレス化します。

製造工程で生まれる必要な情報のシームレスな共有によって、スピーディーなモノづくりを可能にします。また、設備の異常や故障を事前に予知することも可能となり、事前の保全で設備の稼働率を高めます。

IoTによる「つながり」が決定的な役割を果たすのです。

参考記事:スマートファクトリーとは?メリット・デメリットを事例と一緒に解説

ダイナミックセル生産

従来の製造業で多く採用されてきたのが、製造工程・作業員の配置などを一連化させ、大量生産・大量消費に対応したライン生産方式です。また、多品種大量生産を可能にするセル生産も、消費者ニーズの多様化が進む現代では広く浸透しています。

参考記事:セル生産方式とは?ライン生産との違いやメリットを解説

一方で、新時代の製造業のあり方を提示したインダストリー4.0に求められる生産方式は「ダイナミックセル生産」と呼ばれています。

ダイナミックセル生産方式は、従来のライン生産・セル生産の長所を抽出して発展させた生産方式です。生産ラインをいくつかの工程に分類し、それぞれの工程を担当するロボットが、クラウド上にある情報に応じて、リアルタイムで生産方式や製品を組み替えていきます。

急な製品デザインの変更にも対応しながら、大量生産と同様のスピードで生産できることがメリットです。この生産方式を可能にするのも、IoTによる機械整備同士の情報共有がポイントになります。

マスカスタマイゼーション/デジタルツイン

マスカスタマイゼーションとは、製造業におけるマスプロダクション(大量生産)とカスタマイゼーション(個別設計・生産)を組み合わせた考え方です。低コストかつ短納期を特徴とする大量生産と、個々の顧客ニーズを的確に満たす個別設計・生産の両方の性質をあわせ持ちます。

また、マスカスタマイゼーションの実現に向け、注目が集まっているのがデジタルツインです。

デジタルツインとは、現実世界のデータを用いてデジタル空間に再現された、現実と双子(ツイン)のような仮想モデルをいいます。IoTの活用によってデータをリアルタイムに同期し、単体としてのモノだけでなく、製造工程やモノの動作環境などのプロセスそのものまで再現できます。そのため、製造工程での部材や工作機械などの動きが複雑で管理しづらいマスカスタマイゼーションとの相性が抜群です。

市場のニーズに応じて、柔軟に生産ラインを変更することで、変種変量生産への実現が期待されています。

参考記事:マスカスタマイゼーションで多品種少量生産を効率化
参考記事:「デジタルツイン」とは?製造業も仮想空間を活用する

Connected Industries(経産省)

インダストリー4.0の動きを受け、日本の目指すべき産業の在り方として経済産業省が提唱したのが「Connected Industries(コネクテッドインダストリーズ)」です。Connected Industriesが実現された社会では、先端技術が人・技術・機械などのさまざまなモノを企業・産業・国家を超えてつなげていきます。

このつながりから新たな製品やサービス、価値が生まれ、サプライチェーンの最適化や企業経営が効率化されるのです。特に日本の製造業では、専門的な技術と人材による現場力が大きな強みとなっています。

そこで、IoTを活用した技術のデータ化、つながりを基盤とした、産業競争力の向上に向けた取り組みに注目が集まっているのです。

「つながる」IoTの基本機能

IoTの基本機能

IoTの機能は大きく分けて「モノの遠隔操作、モノの動き・状態を検知、モノ同士の通信」の3つに分けられます。それぞれの機能について見ていきましょう。

モノの遠隔操作

IoTの機能の中でも、すでに私たちの生活に溶け込んでいるのが「離れた場所にあるモノを遠隔から操作する機能」です。その代表例にIoT家電が挙げられます。インターネットに接続されているIoT家電は、離れた場所からでも簡単に操作が可能です。

例えばIoT化された部屋のエアコンや照明は、外出先からでもスマートフォンのアプリから電源のON/OFF、風量の強弱や明るさの設定を調整できるため、消し忘れ防止や、起動から正常運転までのラグの解消につながります。外出時のカギの閉め忘れも、IoTの技術で窓や扉の閉め忘れを防止できるのです。

モノの動き・状態を検知

IoTを有効活用する上で欠かせない要素がセンシング技術です。

IoT化されたモノにセンサを組み合わせることで、センサ情報をインターネット経由で収集し、さまざまなモノの動きや状態を検知できます。工場内の機械設備の稼働状況を検知できれば、パフォーマンスの低下や故障の事前防止が可能です。

また、センサを組み合わせたIoT機器を通じて、モノの周辺環境を知ることもできます。温度や湿度、気圧や照度など屋内外を問わずさまざまな場面で活用でき、これまで人が検知していた環境情報も自動で蓄積可能です。

モノ同士の通信

IoTによって、相互に情報の送受信が可能になります。

上記で説明したモノの動きや状態、周辺環境から検知したデータをもとに、人の手を挟まずにモノ同士で自動的に最適な判断・操作できます。

工場内の機械同士がインターネットに接続し「工場自体が効率化を考える」といったスマートファクトリー実現に欠かせない機能です。

充実したネット環境や機器の整備が進めば、モノ同士の通信はひとつの工場内で完結する機能ではなく、工場と工場、工場と企業をつなぎ操作するといった、産業全てがひとつの生き物のように稼働できるようになるでしょう。

IoTを支える技術キーワード

IoTの技術

IoTは単なるひとつのプロダクトを指すのではなく、さまざまな技術の組み合わせから構成されています。ここでは、その中から特に重要な2つの技術要素を紹介します。

センサ技術

センサはIoTのエンドデバイスに取り付けデータを収集し、ネットワークにつなげる役割を担う装置です。収集するデータは多岐にわたり、よく人間の感覚器に例えられます。

センサ 役割 感覚器
イメージセンサ 光を読み取り、画像データを取り込む 視覚
温度・湿度センサ 温度・湿度を測定する 触覚
味覚センサ さまざまな食品、医薬品などの「味」を数値化する 味覚
香気・臭気センサ 「目に見えないニオイ」を数値化する 嗅覚
加速度センサ 傾きや振動などの情報を検知する 三半規管

IoTによる業務の効率化や自動化には、センサ技術によって収集される膨大なデータが必要不可欠です。しかし、センサといっても上記のように多くの種類が存在するため、IoT導入時には適切なセンサ技術の選定が必要になります。

無線通信規格

無線通信規格

総務省が発表した『令和元年版 情報通信白書』によれば、2020年代には約450億台のIoT機器がインターネットに接続され、データ通信量は現在の約2倍になると予測されています。

参照:『令和元年版 情報通信白書』総務省

センサによって収集されたデータも、円滑な送受信ができなければ業務を止めかねません。

IoT機器からのデータは有線・無線でネットワークに接続されますが、有線接続は費用や手間がかかります。そのため、IoT時代に適しているのは低価格で広範囲までデータを送受信できる無線通信規格による通信です。

ひとえに無線通信規格といってもその種類は多岐にわたるため、導入するIoTのプロダクトに合った通信規格の選定が重要になります。

近距離通信に適したWi-FiとBluetoothの基礎知識

Wi-Fiは音声や動画といった大容量のデータでも高速通信が可能です。消費電力が大きい点がネックですが、限られた空間の中で大量の装置をコントロールするには適した通信規格でしょう。

Bluetoothは数メートルから数十メートルといった狭い範囲で使用されることが多い通信規格です。機器の接続が容易で小型化もしやすくWi-Fiよりも省電力ですが、通信速度や距離は劣ります。

長距離通信に適したモバイル通信とLPWAの基礎知識

モバイル通信は我々の生活に最も身近な通信規格ではないでしょうか。長距離の通信が可能なモバイル通信規格の中でも、近年注目を集めているのが5Gです。

5Gは高速大容量通信・多数同時接続・低遅延といった特徴を持ちます。自動運転や無人機の遠隔操作といった、通信エラーや遅延が少なく、多くの機器を同時につなぎながら大容量のデータを処理する必要がある場面での活躍が期待されています。

参考記事:5Gが製造業をどう変えるのか?メリットや業界の動向も解説

しかし工場などの限られた範囲では、膨大なIoT機器がインターネットにつながるため、5Gよりも低価格な通信料金が求められます。そこで注目されているのが、省電力・低価格・長距離のデータ通信が可能なLPWAです。

LPWAの伝達距離は規格によって異なりますが、およそ半径1〜50キロメートルと広範囲まで可能で、通信料も月額100円程度で済む規格が多く、導入コストも抑えらます。

現在LPWAは新しい技術や方式が登場しているため、国によって利用できる周波数も異なる状況です。今後の動向にも注意が必要ですが、IoTの普及に伴って、LPWAはさらに安価で使いやすい無線通信規格となるでしょう。

IoTを活用した製造業のメリットとは

IoTの製造業におけるメリット

製造業におけるIoTの活用は、インダストリー4.0やConnected Industriesの実現に欠かせない技術要素のひとつですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

製造工程の見える化

IoTで扱うデータは、人やモノの状態や周辺環境の様子をセンサ技術で無作為に収集されるため、これまで予想もしなかった範囲の価値ある情報をリアルタイムで活用できます。

製造業では主に製造工程のデータ収集・分析に活用でき、業務の効率化や自動化、属人化を防いだナレッジの共有が可能です。パフォーマンスの低い機器設備の稼働状況を把握して改善できたり、リソース投下の優先順位が明確になるほか、エネルギーを最適に分配した省エネ化にもつながります。

機器故障の事前防止

IoTの機能「モノの動き・状態を検知」によって、機器設備の異常を自動的に検知し、突然の故障による生産ライン停止を事前に防止できます。万が一のトラブル時にも事前の検知や稼働状況の把握によって、状況に合わせた計画変更が可能です。

インダストリー4.0 ・Connected Industriesの実現に求められる柔軟な生産方式への対応にもつながります。

製品・サービスの新たな価値創出

IoTで収集されたデータの活用は、業務の効率化だけでなく新製品・サービスの価値創出に貢献します。これまで製品という「モノ」に価値を置いていた製造業も、IoTのデータを共に販売することで「コト」に価値を置いたサービス提供が可能です。

例えば、IoT化された製品を販売すると、ユーザーの製品利用率を把握でき、効率的な運用につながる改善情報を製品と一緒に販売できます。

故障の時期も数値で見える化できるため、メンテナスサービスやアフターサービスを付加価値として提供できるのです。

製造業のIoT化を妨げる課題

IoTの課題

IoTへの期待が高まる一方で、実際に製造業で活用するにはいくつかの課題が存在します。

コスト面での課題

IoTに対応するには、通信機器やセンサ、無線通信方式の通信料など多くの費用が発生します。また莫大なデータを収集し活用するには、IoT化する機器設備も多く数千万ものコストがかかる場合もあるため、中小企業への導入は困難でしょう。

安易にIoT機器・サービスを導入する前に、まずIoTを活用する目的や、解決したい課題の洗い出しが必要です。

IoT人材の不足

IoT化した機器設備を操作したり、収集したデータを分析し有効活用できる人材の確保が必要になります。また、多くのモノがインターネットに接続されるため、サイバーセキュリティへの知見も欠かせません。

企業での人材確保が困難な場合は、アウトソーシングを活用するのもひとつの方法といえます。

コストに見合った選択と、長期的な視点を持ってIoT導入への投資を検討しましょう。

経営層の意思決定力と知識不足

コスト・人材不足にも関係する課題ですが、IoTの活用を検討する場合、企業の経営層判断が鍵を握ります。そもそもIoTへの知識が薄い場合、IoTで解決できる課題の洗い出しや、ビジネスへの有効活用は困難でしょう。

実際にIoT機器設備を操作する作業員に依存するのではなく、IoTの可能性を経営層が理解しない限り、インダストリー4.0 ・Connected Industriesといったサプライチェーン全体の最適化や他企業との連携は実現しません。

IoTの活用が製造業の分岐点となる

日進月歩で進展するデジタル技術は、人材不足や業務の属人化を防ぐための方法としてさまざまな業界で活用されています。特にIoTはセンサ技術・通信規格の発展とともに、企業への導入が現実的になってきました。

今回は製造業全体を変革する技術としてIoTを紹介しましたが、製造工程の一部分からデータを収集・分析した業務の効率化にも活用できます。

しかし、すでにIoTを活用した製品やサービスが登場していることを考えると、今後日本の製造業がグローバルでも勝ち抜くためには、現状維持の改善にとどまらないビジネスの変革が求められます。

依然として導入に課題のあるIoTですが、まずは基礎知識を理解した上での有効活用を検討しましょう。

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