製造業が働き方改革を行うメリットは?社会背景や自動化活用の事例

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近年、日本では「働き方改革」への取り組みが積極的に進められています。

かつて、日本では長時間にわたる労働が美徳とされ、残業そのものを高く評価することも珍しくありませんでした。しかし、長時間労働が過労死や自殺を引き起こすニュースが後を絶たず、企業の労働環境が問題視されるようになるなど、時代とともに労働に対する価値観の変化が起こりはじめています。

「働き方改革」とは、どのような社会背景のなかで推進されている改革なのでしょうか。具体的な取り組み内容を紹介するとともに、改革によって得られるメリットや成功事例について解説します。

働き方改革は「一億総活躍社会」を目指す取り組み

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参考:「人口推計 / 長期時系列データ 長期時系列データ」総務省
参考:『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』国立社会保障・人口問題研究所

「働き方改革」は、2016年に開催された「働き方改革実現会議」で提唱された取り組みです。2019年4月より、「働き方改革法案」が随時適用されるため、働き方の早急な見直しが求められていますが、無作為に取り組みはじめるのではなく、まずは働き方改革の目的を正しく理解しておきましょう。

「働き方改革」の主な目的は、「一億総活躍社会の実現」にあります。

現在、日本は少子高齢化が問題視されており、今後もその傾向は続くと言われています。総務省の「少子高齢化の進行と人口減少社会の到来」によると、生産年齢人口はピーク時の1995年から総人口とともに減少しています。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口では、2048年に日本の総人口が1億人を割り、2060年には8,674万人にまで減少するという推計もされています。

生産年齢人口の減少を危惧した日本政府は、「働き方改革」によって誰もが社会で活躍できる「一億総活躍社会」を目指そうとしているのです。

働き方改革への具体的な取り組み

多くの企業が「働き方改革」を意識しているものの、どのような課題を解消すると「働きやすい職場」を実現できるのでしょうか。政府が特に推進している3つの取り組みを紹介します。

1.労働時間の見直し

従業員の労働時間は労働基準法において、原則「1日8時間、週40時間」と決められています。

厚生労働省の「平成30年版過労死等防止対策白書」によれば、日本では20.1%、特に男性の28.6%が週の労働時間が49時間以上にも上ることが明らかになっています。「週40時間」という原則を踏まえても、少なくとも1日2時間程度の残業が発生しているのです。

さらに、これまで法律上は残業時間の上限がなかったため、「残業代を払えば働かせ放題」という長時間労働への抜け道がありました。無制限の残業時間を規制するため、政府は働き方改革によって新たに時間外労働の上限を設けています。

労働時間見直しの観点では、年次有給休暇の取得も義務化しています。年次有給休暇の取得は、中小企業でも2019年4月より施行されることが決定しており、多くの企業が早急に対応しなければなりません。

参考:『平成30年版過労死等防止対策白書』厚生労働省

2.柔軟な働き方「ワークライフバランス」の実現

適切な労働時間は「ワークライフバランスの実現」にもつながります。ワークライフバランスとは、仕事と生活の両立によって双方に相乗効果が生まれている状態を指しています。

たとえば、育児によって私生活に負担のある女性でも活躍できる職場にするために、育児休暇や短時間勤務制度を整備したり、遠方に住む社員が通勤に費やす時間や金銭的コストを削減するために、テレワーク制度を導入したりすることで、公私ともに充実させられるようになるのです。

「プライベートの充実によってリフレッシュし、いきいきと働く」、「無理のない労働時間により、オンオフを切り替えられるようにする」といった生活を実現できる職場をつくることが、企業における「ワークライフバランスの実現」と言えます。

3. 雇用形態の格差解消

正規労働者(正社員)と非正規労働者(パートタイマー、派遣社員、アルバイトなど)との間に生じている、賃金や待遇面での不合理な格差をなくす取り組みも働き方改革のひとつです。

具体的な取り組みとして、5年以上同じ企業で働いている非正規労働者が申し込みによって無期限労働契約に転換できる「有期雇用労働者の無期転換」や、雇用形態ではなく仕事の成果によって賃金を定める「同一労働同一賃金」が挙げられます。多くの人が雇用形態にかかわらず厚い待遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようになることを目指しています。

働き方改革に取り組む企業のメリット・デメリット

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働き方改革への取り組みが社会的に求められている一方、「従業員に自由な働き方を提供することで、経営に悪影響が及ぶかもしれない」と不安になる経営者もいるかもしれません。しかし働き方改革は、従業員だけではなく、企業経営にとってもメリットがある取り組みなのです。

しかし、デメリットが全く無いわけではありません。そこで次は、企業が働き方改革に取り組む代表的なメリットに加え、デメリットもあわせて解説します。

メリット1.生産性の向上

働き方改革をきっかけに労働時間の見直しが行われると、所定の時間の中で終わらせるために業務効率化に取り組み、業務分担範囲の見直しや作業手順などの労働環境が改善されるでしょう。また、従業員の業務に対する意識も変わってきます。結果として企業全体の生産性が上がり、今よりも業績が向上する可能性があります。

メリット2.人材の確保

柔軟な働き方ができる職場環境が整うことで、企業のイメージアップにつながります。ワークライフバランスを求める求職者にとって、自分の希望する働き方を選択できる企業は魅力的です。生産年齢人口の減少が見込まれている日本において、働き方改革に取り組んでいる企業は人材獲得競争で優位に立てるでしょう。

また、家事や育児との両立が可能となり、これまで仕事を辞めざるをえなかった従業員も在職し続けられるため、離職率防止にもつながります。

デメリット.管理職への負担増加

働き方改革への取り組みは一朝一夕で実現できるものではありません。従業員から十分な理解が得られないと、社内で大きな混乱が起きることも十分考えられます。管理職への負担が大きくなるばかりか、従業員のモチベーション低下を招く可能性もあります。一度に手広く取り組むのではなく、解消すべき課題に優先順位をつけながら計画的に推進すると、無理なく働き方改革を実現できるでしょう。

企業ができる対策と成功事例

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働き方改革の内容やメリットを押さえた企業は、これまでどのような施策を実施してきたのでしょうか。働き方改革を実現するために、ロボットやツールの導入によって成果を出した事例を見てみましょう。

事例1.ITツール導入で情報の一元管理

ある老舗電熱機器メーカーでは、もともと紙による資料保管を行っていたため、「必要なときに資料が見つからない」、「資料を探すことに時間をかけてしまっている」状況に悩まされていました。

その問題を解決するため、オンライン上で情報を管理できるツールを導入、業務効率化に成功したといわれています。日報や議事録、図面などを一元管理できたほか、数十年前に開発した商品の情報をすぐに見つけ出す点でも大いに役立っているそうです。

引用:創業88年の電機メーカーの「情報改革」武器はEvernote、書類・画像・名刺まで一元管理

事例2.ロボット導入で作業効率化

ある通信機器メーカーの子会社では、複合機の消耗品であるカラートナーコンテナ生産の全行程を自動で行っています。

従来、この工場ではトナーの細かなパーツの取り付けを10人程度の作業員が行っていました。しかし産業用ロボットの導入により、現在は1人の作業員が確認作業を行うようになり、大幅な人員の削減と生産性の向上を実現させています。また、工場のさまざまな情報をデータとして収集、IoTを活用したスマートファクトリーの実現化も進んでおり、さらなる生産性の向上への取り組みが行われています。

引用:完全自動化で生産ラインの人員9割減、京セラが目指す生産競争力 (2/2)

事例3.残業時間の可視化、意見の共有で所定外労働時間を削減

精密部品メーカーでは、「社員1人あたり月平均残業時間14.5時間以下の維持」、「月60時間超過者をゼロにする」という目標のもと、さまざまな取り組みが行われました。個人ごとに残業時間をグラフで可視化したほか、残業の判断を個人ではなく上司による指示型へと移行しました。同時に年次有給休暇の取得を推進、現場で働く人の意見を聞く場を設けるといった取り組みにより、月間平均所定外労働時間を2年間で17.2時間から14.6時間にまで削減することができました。

引用:株式会社ミスズ工業

働き方改革への取り組みが企業の存続と成長につながる

「人手不足」、「長時間労働」など、政府が掲げる「働き方」の課題は、製造業がこれまで直面してきた深刻な課題と言えます。製造業企業が働き方改革に向けて取り組むことで、従来の課題を解消し、企業の存続とさらなる成長につながるでしょう。

現在、製造業の課題解消策として注目を浴びているのが、産業用ロボットです。工場全体から製造ラインの1工程まで、規模を問わず自動化が可能な産業用ロボットは、小型化や低価格化が進み、中小企業でも導入が可能になっています。

働き方改革の実現は、労働時間の遵守といった制度面の改善からはもちろん、現場の効率化からも可能です。数多くある改善策の中から、最適な打ち手を検討してみてください。

関連記事:産業用ロボットとは?主な5種類や事例、他のロボットとの違いを解説

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