2019/10/21

HACCPが2021年までに義務化!知っておきたい衛生管理のポイントとは?

HACCPの義務化

2001年(平成13年)に日本国内で発見されたBSE(牛海綿状脳症)や、複数の企業による牛肉の偽装事件によって食に対する不安や不信が高まったことを契機に、近年の食品業界では、取り扱う食品についての安全性を重要視する傾向が年々強くなってきています。

1947年に食品汚染や食中毒をはじめとする食の事故防止に向けた「食品衛生法」が定められていましたが、上述の動向を踏まえ2003年に抜本的な改正が行われました。

さらに2018年には、食を取り巻く環境の変化や国際化に対応するため、再び改正されています。その中には、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化も含まれており、食品の製造に関わる事業者の間で大きな注目を浴びることとなりました。

そもそも、このHACCPとは、どういった取り組みなのでしょうか。今回はHACCPの内容とメリット、制度の対象範囲について解説します。

世界的に義務化が進んでいる“HACCP”とは?

HACCPとは

HACCP(Hazard Analysis Critical Control Point)とは、食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷までの工程において危害要因を除去、もしくは低減させることを目的とした管理方法です。

もともとHACCPは1960年代にアメリカで宇宙食の安全性を確保するために発案されましたが、後にさまざまな食品に適応され世界中に広がっています。現在では先進国を中心に義務化が進められているものの、日本におけるHACCPに沿った衛生管理を導入している企業の割合は41.9%と、伸び悩んでいることがうかがえます。また、売上規模が100億円以上の企業では9割が導入済みであるのに対し、売上規模5,000万円未満の企業では1割と、小規模企業の導入が大きな課題となっています。

参照: 平成30年度 食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査結果 農林水産省 食料産業局食品製造課

従来は、製造された食品の安全性は主に最終製品の抜き取り検査によって行われていました。この検査は出荷前の製品をランダムに抜き取り、品質を調査する形式です。抜き取り検査は、検査中に問題が見つからなかったとしても、チェックを逃れた危険な食品が市場に流れ、食中毒を引き起こす可能性を完全に排除することができないという課題がありました。また、チェックで異常が見られた際、どの製造工程に問題があったのか追跡調査することも難しく、再発の防止ができないという点も問題のひとつでした。

一方でHACCPは原材料の受け入れから最終製品までの工程ごとに、汚染や異物混入などの危害をあらかじめ予測、防止するために監視や記録を行い、安全性を確保する手法です。異常が認められた時点で原因を追求することにより、不良製品の出荷を未然に防げます。

HACCP導入時に参考にしたい“7原則12手順”

7原則12手順

HACCPの導入には、組織全体での取り組みが不可欠です。では、どうやって導入を進めればよいのでしょうか。厚生労働省がガイドラインとして定めている「HACCP導入のための7原則12手順」をご紹介します。

手順1.HACCPを実施するチームの編成

HACCP導入に向けまず始めるべきなのは、HACCP運用を推進するチームの編成です。その際は必要な情報を集めるため各部門から担当者を集めること、衛生管理の専門知識を持った人を加えましょう。その他、外部への相談や書籍を参考にすることも有効な手段です。

手順2.製品の説明書の作成

原材料や製品の特性、包装形態や消費期限などをまとめた資料を作成します。こうすることで、危険要因を分析する際の基礎資料となります。

手順3.意図される使用方法、対象者を確認する

製品の用途(加熱の有無など)や製品を提供する消費者(一般の消費者のほか、乳幼児や高齢者など、明確な対象者)を確認し、書き出します。

手順4.製造工程(受け入れ~提供まで)の一覧図を作成する

原材料の受け入れから、保管や製造、加工、包装、出荷までの一連の流れを工程ごとに書き出します。

手順5.手順4で作成した製造工程図から、現場での人・モノの動きを確認・修正する

一覧図を、現場での人やものの動きを参考に修正を行います。たとえば「当初から生産量が増えたため、人員に変更があった」、「加工時の温度を見直した」など、現場で発生した変化をもとにします。

手順6&原則1.危害要因の分析

「適した時間や温度で加熱が行われなかった場合、病原微生物が生存している可能性がある」など、それぞれの工程ごとに危害要因を分析します。

手順7&原則2.必須管理点の設定

前段階で分析した危害要因を除去するのに重要な手順を決めます。

手順8&原則3.管理基準の設定

さらに工程管理のための基準を定めます。加熱時の温度と時間など明確な基準を定めておくと、安全確保の判断が容易です。

手順9&原則4.モニタリング方法の設定

観察方法や頻度などの管理基準を確認し、定めます。

手順10&原則5.改善措置を設定

設定した管理基準が達成されなかったとき、どのような形で課題を解決するべきかを定めます。改善した記録の見直しにより、品質の安定化に役立てられます。

手順11&原則6.検証方法の手段の設定

ここまでの流れが、HACCPのプランに沿って管理が行われているのかを検討します。場合によっては修正を行います。

手順12&原則7.記録・文書化・保管システムを確立

記録する形式や保存形態、システムを確立します。不足している項目の追加など、繰り返し記録を行ううえでアップデートを繰り返していくと良いでしょう。

参考: 厚生労働省「食品製造におけるHACCP入門のための手引書」

HACCP導入で得られる4つのメリット

HACCPのメリット

HACCPの導入にあたり、こまめな記録や管理が求められるほか、承認の手続きなどが煩雑なため、導入が滞っている企業も見られます。

確かに導入するまでのプロセスは容易ではありませんが、HACCPの導入は企業にとってさまざまなメリットをもたらします。そこで、HACCPの導入による4つのメリットを解説します。

メリット1.従業員の衛生管理に関する意識の向上

HACCPの導入には、当然ながら衛生管理の知識が求められます。ひとつひとつの工程で衛生管理を徹底し、問題があればその都度改善するためには、それまでに得た衛生管理の知識が欠かせません。結果として、従業員の衛生管理に対する意識の向上につながります。

メリット2.企業のイメージアップ

HACCPの導入は「食品衛生に注力している」というイメージアップにつながります。消費者はもちろん、取引先からも信頼を獲得でき、優良企業だと印象付けられます。

メリット3.不具合が発生した際、迅速な対応ができる

万が一製品に不具合が発生したとしても、HACCPを導入していれば危害の原因を分析し、対策ができます。

メリット4.業務の効率化を実現する

HACCPの導入は従来の工程を振り返り、改善に向け工程の見直しや省略につながります。それまで気づかなかった製造工程の無駄が可視化され、生産性の向上が可能です。

押さえておきたい、HACCP義務化の期限や対象範囲

HACCPの期限と対象

先述の通り、2018年(平成30年)に食品衛生法が改正され、HACCP導入が義務化されることとなりました。実際に改正された条文を見てみましょう。

改正食品衛生法第50条の2

 厚生労働大臣は、営業(略)の施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置(以下この条において「公衆衛生上必要な措置」という。)について、厚生労働省令で、次に掲げる事項に関する基準を定めるものとする。

一 施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理に関すること。

二 食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組(小規模な営業者その他政令で定める営業者にあっては、その取扱う食品の特性に応じた取組)に関すること。

第2項 営業者は、前項の規定により定められた基準に従い、厚生労働省令で定めるところにより公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守しなければならない。

ここでいう「食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組」がHACCPであり、原則として食に携わる全ての業種業態がHACCPに沿った衛生管理の制度化の対象です。

しかし、個人経営の飲食店などでは、HACCPによる管理方法の実施は負担が大きく、業務を妨げることも考えられます。そのため従業員の人数が多く、管理部門も設置されている大規模な食品工場にはHACCPに沿った衛生管理が、以下に挙げるような事業者はHACCPの考えをもとにした衛生管理(各業界団体が作成する手引書を参考に、簡略化されたアプローチによるもの)が課せられることになりました。

  • 小規模事業者
    (※事業所の従業員数を基準に、関係者の意見を聴き、今後、検討)
  • 当該店舗での小売販売のみを目的とした製造・加工・調理事業者
    (具体例:菓子の製造販売、食肉の販売、魚介類の販売、豆腐の製造販売 等)
  • 提供する食品の種類が多岐にわたり、変更頻度が頻繁な業種
    (具体例:飲食店、給食施設、そうざいの製造、弁当の製造 等)
  • 一般衛生管理の対応で管理が可能な業種 等
    (具体例:包装食品の販売、食品の保管、食品の運搬等)

またHACCP導入の義務化が施行される時期は、改正された食品衛生法の公布日(2018年6月13日)から2年以内です。施行日から起算して1年間は経過措置がとられますが、遅くとも3年以内には導入が求められます。

現時点でHACCPの義務化を無視した場合の罰則は、明確に定められているわけではありません。しかし、HACCPの導入を怠ったことから問題が発生、結果として食品衛生法を違反した場合、最高で3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

衛生管理が徹底されておらず問題が発生すれば、顧客からの信用を失います。問題をきっかけに客足や取引先が遠ざかり、閉鎖を余儀なくされる前に、HACCPの導入を検討しましょう。

HACCPの導入で信用の獲得へ

食事は人間を健康にする場合もあれば、その逆も大いに考えられます。安全な食品の提供が当たり前となる社会では、HACCPの導入が不可欠です。手間やコストばかりに気をとられず、自社でもできることはないか検討してみましょう。

近年の食品業界では産業用ロボットが活躍しています。産業用ロボットを導入すれば、ヒューマンエラーが起こったり、人間の体内に潜むウイルスや菌などが食品に移ったりする確率を減少することが可能です。また、食品製造の工程を見える化する為のIoTも環境の維持管理に非常に有効です。HACCPと同時に導入を検討してみてもいいでしょう。

参考記事:産業用ロボットは食品業界で活躍できる?普及への課題と導入事例

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