化粧品市場にも進出する産業用ロボット。業界の課題と普及への道

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産業用ロボットの導入により、作業効率化や人件費のスリム化を実現している企業が増加しています。一方で、これまで人の手で行っていた作業をロボットに代替させることが難しく、導入がなかなか進まない分野が残っていることも事実です。


産業用ロボットの導入がひとつの課題となっている化粧品市場に注目し、化粧品市場の現状と産業用ロボット導入の事例をご紹介します。


景気は上向き。化粧品市場の動向

cosmetics2参考:経済産業省生産動態統計調査

 

経済産業省の調査によれば、化粧品の国内工場出荷金額は2011年以降、増加を続けています。


バブル経済に沸いていた頃の日本は、「百貨店でハイブランドの化粧品を販売する」、「有名女優やモデルを起用したCMで大々的に宣伝をする」といった形で消費者を獲得、市場規模を一気に拡大させていました。しかしバブル経済の終わりにより景気が低迷すると、消費者は低価格・高品質の商品を求めるようになります。


その結果、化粧品市場は長い停滞期を迎えますが、再び市場が上向きになった背景には以下のような理由があります。

理由1.インバウンド消費の増加

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日本政府観光局(JINTO)の統計[田中千晴5] によると、2018年10月時点での訪日外客数は261万9,300人にのぼっています。また前年の1月〜10月までの累計から+9.7%であることからも、大きく伸びている状況がうかがえます。


かつては中国人観光客が日本製品を大量に買う「爆買い」が注目を集めましたが、これは日本製品の品質の良さが海外から高く評価されていることの証明でもあります。特に化粧品は安価でサイズも小さく、お土産として喜ばれる傾向にあるといわれています。


東京オリンピック・パラリンピックや大阪万博といったイベントをきっかけに、今後も訪日外国人の数は増える見込みです。インバウンド消費による化粧品の需要も、訪日外国人の増加にともなって、これからも増加すると考えられています。

理由2.男性をターゲットにした化粧品の増加

「化粧品の主な消費者は女性である」というイメージが強い反面、男性の間でもスキンケア商品やにおいケア商品を中心とした化粧品の需要が高まっています。


その理由のひとつとして、女性の社会進出により女性社員が同じ空間にいる状況が当たり前になった今、見た目や匂いを気にする男性が増えたケースが挙げられます。また、男性自身の美容意識の高まりも後押しとなっており、化粧品の需要はもはや女性だけのものではなくなりつつあるといえるでしょう。

理由3.高級化粧品需要への回帰

日本全体の景気回復をふまえ、高級化粧品の需要が顕著となっています。各化粧品メーカーでも美肌効果をうたう高級美容液をはじめ、高価格商品の販売をスタートさせています。


若年層にも“インスタ映え”が見込めるオートクチュール系の化粧品の需要が高まっており、年代を問わず高級化粧品を積極的に購入する姿勢が見られるようになりました。

産業用ロボット、化粧品市場参入の現状

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現在は、国内シェアトップの化粧品メーカーがパウダー(粉末)化粧品の製造ラインで双腕ロボットを試験的に導入しています。しかし、これまで産業用ロボットは化粧品製造に向いていないと考えられていました。


では、化粧品業界が産業用ロボットを導入するときに抱える課題と、解決への取り組みについてご説明します。

課題1.人の手を完全に離れられない作業がある

完成した商品の表面などを目視で検査し、傷の有無を判断する作業など、化粧品の製造には人の感性が求められます。AI画像処理によるで作業をすべて代替することがまだ難しく、今なお人手による生産が主流となっています。


そのため、完全に産業用ロボットに作業を移行させるのではなく、ロボットが組み立てた商品を人間が検品するといった強みを活かした分業にすることで、高い品質を守ることを目指しています。

課題2.柔らかい・薄い製品を取り扱うのが困難

化粧品にはクリームやシートマスクなどの柔らかい・薄い商品も少なくありません。微細でデリケートな製品を取り扱う以上、人の手による製造が必要不可欠でした。


しかし人手には限界があり、繊細な製品を手作業で一つひとつ製造するには多大な労力がかかります。繊細な作業には熟練度が求められるほか、一定の集中力を保たなければ製品をうっかり傷つけてしまった……という事態も起こりかねません。


そのため、産業用ロボットのアーム先端に柔らかい素材を使い、手作業と同様の動きと力を持たせるような開発が進められています。ロボットの構造や素材を見直すことで手作業を再現しつつ、一定のクオリティを保った製造を実現させているのです。


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課題3.構成材料が複雑な商品の製造が求められる

化粧品の中にはさまざまな色や質感のワークがひとつのパレット容器に収納されている「パレット化粧品」といった製品もあります。容器の中に正確な分量の構成材料を入れていく作業を、ロボットに対応させるのは現在も難しいとされています。


この課題の解決に向け、「組み立て」、「印字」などそれぞれの作業に対応できるロボットを複数導入し、作業員を検品に集中させる環境を構築した企業があります。すべての作業を1台のロボットで行うのではなく、複数台にわけることで課題の解決につなげています。


参考:

ロボット導入実証事業事例紹介ハンドブック2018

化粧品製造における産業用ロボットの活用事例

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最後に、これまで発生していた課題を解決し、化粧品工場に産業用ロボットを導入させた事例をご紹介します。

事例1.ネイル筆製造の各工程をロボット化

伝統工芸品であり、世界的にも支持されている化粧筆を製造している企業は、職人の高齢化や安価な海外製品の台頭により工程の自動化が求められていました。


そこで、この企業は製品の中でも比較的生産が複雑ではない「ネイル筆」の製造工程を自動化します。毛先の形成や切断、不要な部分のバリ取りなどを複数台のロボットに担当させた結果、製造に必要な人員のスリム化、高い品質の商品を大量生産させることに成功しました。


事例紹介:

ロボット導入実証事業事例紹介ハンドブック2018

事例2.チューブ製品のカットを自動化

クリームなどの内容物をチューブ型に充填した商品は、熱により上部をプレスし、漏れを防いでいます。また、取り扱う人の怪我やレジ袋の破損を防ぐためにチューブ製品の鋭角部分をカットする「Rカット」という作業も必須です。


ただ、パッケージデザインの変更が頻繁に行なわれており、手動で商品に合わせた形でのRカットを余儀なくされていました。


そこである化粧品製造会社は産業用ロボットに「コンベアに流れてくるチューブ製品をRカット装置に2本同時に差し込み、カットされたものを移動させる」という工程を担当させました。また、コンベア式製造ラインの横という、限られた作業場所でも働けるよう伸縮する関節を用いており、わずかな占有面積で業務を可能にしています。


事例紹介:LIFE Robotics

化粧品製造への産業用ロボット導入は、市場規模をさらに拡大させる。

これまでに考えられていた導入時の課題を解消するために、産業用ロボットの技術開発が日々進められています。需要が国内外で拡大している状況で、労働力不足を解消しなければせっかくのチャンスを無駄にしてしまう可能性もあるでしょう。


製造において活躍が見込まれる産業用ロボットの導入を今一度検討してみてはいかがでしょうか。

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