急成長する産業用ロボット市場。中国が「世界の工場」と呼ばれるワケ

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かつて日本は、「ロボット大国」と呼ばれるほど、進んだロボット産業を有していました。国内の産業ロボット市場は着実に成長しているものの、近年、他国のロボット市場は、日本の成長速度を遥かに上回る勢いで成長しています。中でも、中国は「世界の工場」と呼ばれるほど、注目が集まっています。

この記事では、中国の産業用ロボット市場の現状やIoT・AI化事情、国内メーカーが中国市場に参入する方法についてご紹介します。

中国の産業用ロボットの現状とこれから

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国際ロボット連盟(IFR)などによると、中国は2013年に世界最大の産業用ロボット市場となりました。2017年には、中国内の産業用ロボット販売台数は12万台を突破しています。これは世界の産業用ロボット販売量の3分の1に相当する規模です。2020年には、産業用ロボットの年間生産台数が15万台を達成する見込みとされています。

また、中国政府は、「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」を2015年5月に発表しました。「中国製造2025」は、2025年までに世界の製造強国入りを果たすことを明言した、今後10年間の製造業発展ロードマップです。

中国は2049年に建国100年を迎えるため、この年までに世界トップレベルの製造強国に登りつめることを大きな目標としています。こうした大きな目標を掲げている中国は、国を挙げて製造業やロボット市場の底上げを図っていくと考えられます。

参考:急成長する東北地域のロボット産業(中国)

生産性向上のために最新技術も取り入れる。中国製造業のIoT・AI化事情

近年、産業用ロボットと密接な関係にある製造業では、一つの変革が起ころうとしています。これまで工場の自動化を行うためには、産業用ロボットの活用が一般的でしたが、IT技術の進化によってIoTやAIなど選択肢が増えました。

IoTやAIといったIT技術が現場で採用されはじめれば、産業用ロボット市場への影響は小さくありません。現在、IoTやAIが中国内の工場でどれだけ浸透しているのか、ご紹介します。

未来への投資として海外企業の買収も。IoT化に備えるフェーズか

製造現場のIoT化を進めることは、生産性や経営、管理に大きな改革をもたらします。具体的には、「パフォーマンスの数値化」「現場データを活用したエネルギーの最適化や改善案の策定」などがIoTによって実現できるのです。

2016年、中国最大級の家電メーカーが、ドイツの大手ロボティクス企業を買収しました。これは、中国企業がIoTに本格的に参入しようとしていることの表れと言えるでしょう。

関連記事:スマートファクトリーとは?メリット・デメリットを事例と一緒に解説

産業用ロボットのAI活用が近いうちに一般化する可能性も

産業用ロボットにAIを搭載すると、従来では対応できなかった作業も可能です。たとえば、センサーで捉えた製品を自動で判別して最適な動作ができるようになります。また、これまでエンジニアが個々の筐体にあわせてプログラミング(ティーチング)する必要がありましたが、そのコストも減らすことが可能です。

中国のAI技術の発展は凄まじく、2017年にはAI関連スタートアップの資金調達額でアメリカを抜いたほどです。中国の国営メディア「新華社通信」は姿形を持つAIアナウンサーを発表し、自然な発音と仕草で世界中に衝撃を与えました。中国は政府の政策支援などに支えられて「AI大国」と呼べる水準まで到達しており、その技術を産業用ロボットに活用する試みも進んでいます。

関連記事:ティーチングレスを実現。産業用ロボットにAIを搭載するメリット

中国の「インターネットプラス」政策

「インターネットプラス」政策とは、2015年3月に、全国人民代表大会(中国の国会)で行った政府活動報告の中で、李首相によって発表されたものです。製造業とビッグデータ、IoT、AIなどを結びつけ、インターネット企業による国際市場の開拓を目指しています。将来的には、中国製造2025と組み合わせることによる製造業の発展を目指すようです。

日本のロボットメーカーが中国市場に進出する方法

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最後に日本のロボットメーカーが中国市場に進出する際、意識しておきたいポイントをご紹介します。

ポイント1.中国の現地企業との連携

ある日系商社は、中国東北地方・瀋陽市の企業と産業用ロボットやスマート物流などの面で連携しています。中国企業がロボットの国内での研究開発・生産・販売に向けた取り組みを進める中、中国企業の中で、技術はもちろん知的財産権、認証などの分野で日本企業(および研究機関)との連携を進めたいというニーズがありました。日本企業と中国企業の連携は、双方にとってメリットがあるのです。

なお、中国には「ロボット産業園区」と呼ばれる地区があります。この場所にエリア本部や研究開発センターを設立した場合、オフィスレンタル費用のうち一定の比率が補助の対象となるなど、様々な恩恵を受けられます。河北省では、これまでに滄州国際ロボット産業園、唐山ロボット産業園区などの7つの産業園区が建設され、日本の総合家電メーカーなどが進出しています。中国展開を考えている場合は、このような特区を狙うのが良いでしょう。

ポイント2.共通プラットフォームの構築

目覚ましい技術力の発展が見られるとはいえ、現場で活躍するためのロボット開発や人材育成は、最重要課題となっています。中国政府も技術振興のために、ロボットを研究したりロボット産業の人材育成を行ったりする中国国内外の大学に対して、支援金や補助金を拠出しています。

例えば、ロボットの技術研究開発などの場で、共通の技術プラットフォームおよび産業プラットフォームを構築すれば、投資額に応じて補助を受けられます。ロボット展示会など、交流活動の実施も優遇措置の対象となるようです。優遇措置を受けられるだけではなく、ロボット産業における日中間の人材交流も行えるというのは一石二鳥といえます。

中国の産業用ロボット市場の動向にこれからも注目が集まる

中国の産業用ロボット市場は、政府主導による多額の投資や強烈な推進力によって、着実に成長を続けています。現在、世界的なロボットメーカーに名を連ねているのは、依然として日本やドイツの企業ですが、近い将来、中国ロボットメーカーが台頭してくることも十分考えられます。

また、「世界の工場」と呼ばれている中国は、世界展開を検討している日本企業にとっては魅力的な市場です。しかし、言葉も文化も商慣習も違う中国に進出するときは、当然ながら多くのリスクを考慮しておきましょう。日本の商談とは異なるスピード感や、中国政府の方針にも配慮が必要です。中国市場に進出するために大切なのは、両国のメーカー関係者同士のコミュニケーションです。お互いの文化を尊重しながら、ビジネスを進めていくことが必要といえるでしょう。

世界のロボットメーカー勢力図への影響やビジネスチャンスの観点からも、急成長を続ける中国の産業用ロボット市場の動向に目が離せません。

関連記事:市場規模は2035年までに5倍に。産業用ロボット業界の成長見込み

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